EX-Ep 1/2 結局懲りない男
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「え……?」
それは休み明けの薄暗い夕方のことだった。
いつもの帰り道を歩いていると、既視感を覚えた。
それは鬼気はらむ雰囲気を放つツァルト先輩が、剣を持って暗がりからユラリと現れる姿だ。
まさかと思い僕も剣に手をかけたけど、そういえばあれから折れたままだった……。
「私は間違っていたよ……」
「ぁ……良かった、驚かさないで下さいよ、もう……。また襲われるのかと……」
「大事なのは武器の質ではない……」
「あの、なんの話ですか……?」
「大事なのは――そう、数だ! お願いしますっ、先生方!」
ツァルト先輩が隠れていたわき道から、見るからにまともじゃなさそうな人たちが続々と現れて僕を取り囲んだ。
この人たちって傭兵、なのかな……。
「ちょ、ちょっと待って下さいよ先輩っ!? この前のことで、改心してくれたんじゃなかったんですかっ!?」
「なんのことだね? 私の名誉をかけて貴様を倒すっ、皆の者ッ、200万イェン分の皆さん、やってしまって下さい! あっ、見た目はヘナチョコだけどコイツクソ強いんで、手加減抜きの本気モード増し増しで叩き斬って下さいなっ!」
「え、ええええええーっっ?!!」
わっわっ、えっと、じいちゃんの技、じいちゃんの技……。
僕は折れた上に刃こぼれしてしまった長剣を鞘に戻し、爺ちゃん直伝の居合いを放っては距離を取った。
あの大狼やアイアンゴーレムと比べれば、数が多いだけでずっと楽な相手だった。
相手の武器を一つ一つ破壊しては、僕は包囲から逃げる。放って、逃げて、放っては逃げた。
ほどなくすると、傭兵さんたちがまとめて地にはいつくばって、一部が僕に頭を下げた。
「お見それしました、弟子にして下さい!!」
「へっ……!?」
「バーカーナーァァァァッッ?! 200万イェン分の先生方がぁぁぁぁっっ?!! こなくそーっ、やはり信じられるのは己だけかっ、チェストゥゥーッッ!!」
ツァルト先輩が不意打ちで、僕にいかにも高そうな剣を振り下した。
しまった。いきなりだったからどうしても避けれなくて、またツァルト先輩の剣を無残に砕け散らせてしまった……。
「ギャーーッッ、ガンコな名工を約一週間拝み倒して、どうにか作ってもらった業物がぁぁぁーっっ?!!」
「ご、ごめん、ツァルト先輩……避けれなくて、つい……。えっと、意外とまめなんですね……?」
「お、覚えていろよっ、次はこうはいかないからな、エドガーくんっ!!」
「そんな次とか言われても困りますよっ!? もうこんなこと止めて下さいよーっ!!」
「イヤだっ、私は絶対に君に勝つ!」
一目散にツァルト先輩は逃げて行き、僕を拝み倒す迷惑な人たちだけが残った……。
宿に来られたら困るから、一度逃げてまかなきゃ……。
『つくづく懲りないバカだな……。先日助けてくれたのは事実だが、やはりアイツはアホだぞ……』
そんなこと言っちゃダメだよ……。
一応、本当に僕たちを助けてくれたんだから……。
その後、僕は200万イェン分の先生方を巻いてから、丸白鳥亭に戻った。
それから軽く身体を布で拭いて、クルスさんの代わりに宿のカウンターに立つと――
「ひぇっ……!?」
「あっ、貴方は先生っ、貴方のような方がなぜこのような場所に!?」
巻いたはずの傭兵さんたちと鉢合わせになった……。
大金の入った彼らが高いメニューをたくさん注文してくれたおかげで、ベルートさんとクルスさんはご機嫌で、ティアも彼らと一緒に元気に笑っていた。
ここの人たちって、たくましいな……。
このおおらかさと陽気さをもう少し見習おう……。




