表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/71

Ep 4/7 唇と嘘と婚約者 - つるるん -

・○


「エドガー様ッ、わたくしスッとしましたわ! さすがわたくしたちのエドガー様ですの!」

「ぷっぷぷぷっ……この結末は予想外だったわー。よくやってくれたじゃねーか、エドガー!」

「ぇ……?」


 あ、あれ……。

 ソフィーとキスをする覚悟を決めたのに、知らないうちに時間が飛んでいた……。

 ソフィーが僕の二の腕に飛びついて、リョースと一緒にはしゃいでいる……。


 騒ぎに駆け付けてきた生徒たちが僕たちを遠巻きに囲んで、それになんでかわからないんだけど、庭が真っ黒に焦げている……。


「凄いな、あの新入生……」

「ああ……。しかしフランクさんも、あれはやり過ぎだったのんびりな」

「そうね……実は私、あの人嫌いだったの。レディに対する態度が差別的だもの……」

「ファイアーボールって……素手で受け止めて、投げ返せるものだったかな……」

「魔法の素養があるならまだしも、平民なんかがどうして……」


 え、何、この惨劇……?

 フランク先輩の姿がないけど、何が起きたの……?

 今度は何をやらかしたんだ、もう一人の僕は……っ!?


「ぁぁ……エドガー様……」

「ソフィー……?」


 ソフィーが情熱的な瞳で僕を見つめて、恥じらうように唇を隠しながら僕から視線を外していた。

 …………ぇ?



 ・



その日の夕方、丸白鳥亭のティアは――


「はー、ドシャおいしかったなー、ドシャー。……んー?」

「お、お嬢ちゃん……おぢさんね、落とし物をしちゃったみたいなんだよぉ……。一緒にぃ探してくれるかなぁ……?」


 今日は変なおじさんに声をかけられたそうだ。

 口が臭かったと言っていた。


「いいよー。なにおとしたのー?」

「こ、これくらいのね、お、お財布を落としちゃってねぇ……大変なんだよぉ、おぢさんさぁ……」


「おさいふかー。それは、ご……ごしゅうぎ、さま?」

「あは、あははぁ……♪ それを言うなら、ご愁傷様だよ、ティアちゃぁん……♪」


「おー、なんでティアのなまえ、しってる?」

「えっ……!? だ、だってティアちゃん、ご、ご町内の人気者だから、へ、へへへ……♪」


 ティアから聞く限りでは、100%混じり気無しの不審者としか思えなかった……。


「おお……ティアも、ゆーめーになったもんだなー。よし、ティアに、まかせとけー?」

「ありがとうティアちゃん……。こ、これくらいの財布なんだ……。あ、あっちの、裏の方で落としたかもなぁぁ……?」


 疑いもせずに、ティアは怪しいおじさんと一緒に裏通りに入ってしまった。


「ないなー」

「はぁ……おぢさんもう疲れちゃったよ……。ああそうだ、よかったらティアちゃん、おぢさんの家に来るかい? 甘いお菓子があるんだ……」


「それ、エドガーがつくったやつより、おいしーか?」

「うん、お、おお……美味しいお店のお菓子だよぉ……?」


「……んんー、やっぱりいい。エドガーが、つくったやつが、いい」

「そんなこと言わないで、おぢさんの家においでよぉ……? エドガーくんが作ったお菓子より、絶対美味しいよぉ?」


「あ! おーいっ、なにしてるのー!? えーと……つ……つー……つるるん?」

「つるるんではないっ、私の名は、ツァルトだ!」


 ティアが言うには、つるるんが裏通りで隠れん坊をしていたそうだ。

 きっと僕を待ち伏せしてたんじゃないかと思う……。


「つ……つるる、ん?」

「全然、言えてないではないかねっ!? しかしそれはそうとティアくん……」


「なーにー?」

「そこのいかにも怪しい中年オヤジとは、いったいどういう関係かね?」

「ぁ……ぅ、いや、わ、ワシは……」


「おさいふ、おとしたんだって。さがしてあげてた」

「そ、そうなんですっ。お財布落としちゃって、はははっ、ドジだなぁワシーッ!」

「おおそうだったのかね――悪即成敗ッッ!! フッ……安心したまえ、峰打ちだ……」


 つるるんが、くちくさいおじさん、やっつけた。

 ティアは後で、そう要領を得ない話を僕にしてくれた。


 その謎のおじさんが悪人とは限らないけど、とにかくツァルト先輩が気まぐれで良かった……。


「おじさん、わるいひと?」

「うむ。見た目が怪しいから悪だ。気をつけたまえよ、ティアくん」


「うん! ありがとー、つるるん!」

「だから、私の名はツァルトだと言っているだろう……。まあいい、それはそうとティアくん……」


「なーにー? つるるんも、エドガーまってたかー?」

「そのことなのだがね……。その……先日は済まなかった……次は正々堂々と、今度こそエドガーくんをぶちのめすから、見ていてくれたまえ!」


「わかったー! でもなー、エドガーなー? つるるんには、むりだと、おもーぞー?」

「フフフ……舐めるなティアくんっ、確かにヤツは強敵かもしれない! だが――金の力はもっと強いのだよっ!!」


 こうしてツァルト先輩は、僕の闇討ちを果たすべく決意を新たにしたそうだった……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ツァルトはアホだが不屈の精神と正義感は褒めてもいいとお見ますw
[一言] つるるん、その……君は懲りるということを知らないの?w
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ