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ショートショート5月~

ポスト

作者: たかさば

夕暮れ時に、ポストが現れた。

赤い、少し小さめのポスト。



あなたは、誰に手紙を出しますか。


「子供の頃の、自分に。」


―――あなたは今、何も信じることができないでしょう。ずいぶん、信じることができないまま、生きていくことになります。けれど、あなたは信じてもらえる人と出会って、信じることができるようになるの。大丈夫。しばらくは、自分を閉じて、自分の心を、守ってあげて。



あなたは、誰に手紙を出しますか。


「大嫌いな、あの人に。」


―――あなたのせいで、私は自分を見失ってしまいました。どうして私にそんなことをするんですか。そんなに私が嫌いなら、私から離れていってくれたらいいのに。私から離れることができないことを知っているでしょう。あなたはとても、意地悪です。私だけに意地悪です。大嫌いです。



あなたは、誰に手紙を出しますか。


「共に生きる、伴侶に。」


―――あなたがいるから、今の私は輝くことができるのです。私に寄り添ってくれる、大切な人。共に生きていく人。私を横においてくれる。私の横にいてくれる。あなたがいてくれるから、私は私の価値を見出せる。あなたの価値は、私が一番知っている。なくてはならないあなた。同じ時を過ごしてくれて、ありがとう。

 


あなたは、誰に手紙を出しますか。


「昨日見た、夢に。」


―――あなたが見せてくれた夢は、私に新たな希望を与えてくれたのです。失くしてしまった記憶を、再び私の中に思い出すことができました。忘れた事さえ忘れていた事に、気が付いたのです。思い出せてよかった。あの日の私の誓いが、また、私の胸にある。生きて、いけると前を向くことができました。



私は、ポストに、手紙を出しました。


―――いつもありがとう。夕暮れに、突然現れる、不思議なポスト。誰かの伝えたい気持ちを飲み込んでくれるポスト。伝えたいのに伝えられない、気持ちを飲み込んでくれるあなた。伝えたい気持ちを、手紙に書いて。手紙に書いた気持ちを、ポストに投函すると。人は幾分、気持ちが楽になるのです。私は何度、あなたに手紙を投函したことでしょうか。友達のいない寂しさを嘆き。人の裏切りに悲しみを覚えたことを嘆き。自分のずるさを嘆き。運命の過酷さを嘆き。弱音を吐けない状況を嘆き。嘆いてばかりの私の手紙は、ずいぶん重い、ものだったでしょう。けれど私は、手紙を書くことで、自分の本当の気持ちを知り、自分のやりたいことに気が付き。自分のするべきことを選択することができたのです。あなたには、感謝しかありません。ありがとう。



二日後。


私の出した手紙は、料金不足で私のもとに帰ってきてしまった。

しまった、郵便料金が変わったこと、忘れてた…。


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― 新着の感想 ―
[一言] あああ。文通してたら、料金変更に気づかなかったお兄さんが前の金額で出しちゃって、私が払ったり。重量オーバーで私が代わりに払ったり。あのひと、うっかり屋さんだったな… なんてことを思い出す。…
[良い点] 台無しだよw どうしてこうなった! [気になる点] 文章に書くと、見え方変わりますよね。 [一言] 名も知らぬ作者へ。読んでくれてありがとう。
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