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丘に付いたルリアは、馬を木につなぐと後ろを振り返る。
見えたのは、白い竜。
背中に翼を持ち二本足で立つその竜は、翼だけ先に向かって白から赤へグラデーションになっている。
金色に輝く瞳でルリアを見つめる白竜へ、ルリアが声をかける。
「エド、久々ね」
この白竜ことエドとは、7年前に初めて出会った。
父から、母が死んだと聞かされたあの日。
家から飛び出して一人、この丘で泣いていたあの時、後ろから声をかけられた。
それから3年一緒に過ごした。
最初寂しさを埋めるためだったルリアだが、いつしかエドと一緒にいることが楽しくなっていた。
ところがある日、いきなりエドがいなくなってしまったのだ。
野生の竜が一ヶ所にずっと居ることはないのだと、知っていたハズなのにとてもショックを受けたのを覚えている。
それから4年、まさかエドがここに戻ってくるとは思っていなかったルリア。
部屋から見えた姿を疑い、ここまで来たのだ。
そんなルリアの頭に声が響く。
―ルリア、元気だった?
「ええ。この4年間元気に過ごしていたわ。あなたはどこへ行っていたの?」
―ルリア、僕と一緒に行かない?一緒にいたら、きっと楽しい。後悔させないよ。
「そんなこと出来るわけないわ。私は辺境伯の娘なのよ?いきなり来て、ずいぶん強引ね。」
―それは、状況が違っていたら一緒にいてくれるってことだよね?僕と一緒にいるのが嫌な訳じゃないよね?
「そうね。エドと一緒に居られたら楽しいかもしれないわね。でも、そんなこと無理よ。」
―わかった。今の言葉忘れないでね。また来るよ。
会話が終わるとエドは、どこかへ飛んでいってしまった。
久々の再会にも関わらず、ゆっくり話も出来ないことに怒りを感じたルリアだったが、野生の竜だと諦め帰路につくのだった。