プロローグ
「前から思ってたけど、お前ほんと使えないな! このパーティーから出てけ!」
そう。これはある日突然魔王討伐のため結成された勇者パーティーにいたフェリックが、突然リーダー――アレグレッグから告げられた言葉である。
フェリック以外の3人のメンバー――フレデニス、ルドレア、オーフィンはリーダーの後ろに回り、フェリックを半目で見てきている。
唐突にそんなことを言われたフェリックは一瞬驚いたが、何かの冗談だと思い言った。
「お、おいおい、冗談だろ? この俺がいなくなったらこのパーティーはやってけないじゃないか」
笑いながら必死に冗談を言うフェリック。しかし、フェリックは冗談のつもりだったが、アレグレッグには冗談には聞こえなかったのだろう。顔色をさらに険しくし、ため息を吐いてこう言った。
「⋯⋯可哀想なやつだなお前は。いいから出ていけ。もう二度と俺たちの前には現れるな」
そう言ってフェリックたちの勇者パーティーはフェリックに背を向け去っていってしまった。
アレグレッグの目は哀れな物を見るそれだった。怒鳴られたりするよりももっとダメージをくらうそれは、フェリックを深く傷つけた。
「⋯⋯なんでだよ。しかもこんなとこに置いてくなんて⋯⋯」
そう。今フェリックがいる場所はシャトロワの森。王都ギルテリッジから少し来たところにある森だ。
このシャトロワの森は霧が濃く、迷う人も多い。実際、この森は人を一定の確率でどこかへ転移させると言われている。
フェリックはそんなところへ置いてかれ涙目になった。
「俺になんの非があったっていうんだ⋯⋯」
フェリックは自分がパーティーから追い出された理由を考える。
たしかに今までモンスターの討伐をフェリックだけ達成出来ていない。フェリックは他にもないか考える。
フェリックは魔法が一応使えないことはないが、モンスター討伐などに役立つような魔法はなかった。
他にも、剣が上手く扱えない。弓が上手く扱えない、などなど。
またアレグレッグもここ最近大型のモンスター討伐が出来ていないことに苛立っていたのだろう。それにダメダメのフェリックが付け足され、怒りが爆発したのだ。
「めちゃめちゃあるじゃないか⋯⋯」
フェリックは自分の非の多さにため息を吐くしかなかった。フェリックは辺りを見回す。濃い霧が立ち込めガサゴソと音がする。ここに長時間いては転移させられてしまう可能性も出てくる。
「とにかく、この森から出ないと」
フェリックはシャトロワの森から、王都ギルテリッジに戻るため、濃い霧の中ふらつく足取りで歩いていった。
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