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異世界の理想と現実

また、思いついたものを書いてしまいました。許してください。

 ラノベの世界ってさ、都合よくねぇか?


 まぁ、物語を進行させるうえで、主人公が強くないと意味ないからしょうがないかもしれないけど、システムウインドウとか搭載されてる世界ってどうなのよ?


 一体誰が作ってどうやって提供してんのよ? ネット端末を生まれてくる人間が一人一人持ってて、赤ん坊の時から受信できんのか? 神様はそんなシステムを作って人に提供するほど、暇なのか?


 俺は常々疑問に思っていたんだよ。


 こんなの絶対ありえねぇってさ。


 高をくくって笑っていたら、トラックがいきなり突っ込んできて俺はお陀仏。


 脳みそぐっちゃり行って、あの世に飛んじまったよ。


 気が付いたら神様が目の前に座ってて、「あなたは死ぬはずではなかった。違う世界に生まれ変わらせます」とか、うんじゃらもんじゃら言っていた。


 びっくりした。ラノベの世界がマジにあるって思わなくてよ。ラノベごめん。俺が悪かったって誤ったけど、それは間違っていたんだよ。やっぱり現実は甘くなかったってこった。


 神様は俺を地球とは違う惑星に生まれ変わらせることを約束し、チート能力をくれることになった。

 

 チート能力は「魔法スキル極限」とか言う奴で、生まれた時から魔法を使えるチート能力だぜ。神様と話し合った結果、これになった。チート能力は魂に一つだけしか与えられないとかで、これになったんだ。


 だけど、これには重大な欠陥があって、チートなんてものは、嘘っぱちだったんだ。


 結局俺は異世界の小さな村、「クエリ村」っていう農民に生まれた。


 異世界だから、さぞかし美男美女が多いと思ったらそうでもなくて、両親は普通以下の顔だった。俺も普通以下だった。


 村の連中も可愛い奴がいなくて、日本よりひどいと思った。これが異世界クオリティーかよと憤慨したが、俺には魔法がある。歩けるようになってからは魔法の練習を欠かさずしたが、一向に魔法が発動しない。毎日練習してもだめだ。


 心で念じてもダメ、ウンコする時みたいに力んでもダメ。お祈りしてもダメ。理解できないので、両親に聞いてみた。


「レグは魔法士様になりたいの? 無理だからあきらめなさいねぇ~」


「そうだぞレグ。魔法を使うには高価な魔法杖が必要だし、詠唱するための言葉をいっぱい覚えなきゃならない。魔法学校に通わければいけないし、うちにはそんな金が無いんだ。ごめんなレグ。あきらめてくれ」


 俺はその言葉聞いて驚愕した。神様がおすすめのスキルと言ってくれたのに、これはない。魔法とやらは杖と詠唱が出来なければ使えないという。いくら魔法スキルが高くても、杖と詠唱が出来なければ意味が無いのだ。


 馬鹿な!! 


 俺は憤慨した。ということは、身体強化魔法とか、呪い系や催眠系の魔法も、魔法の杖がなければ無理ということになる。この異世界は魔法技術が盛んと言うことで俺はここを選んだ。それなのに、これはない。


 神様が言っていたチートはいろいろあったが、全て魔法関連のスキルだった。常時健康とかいうパッシブスキルは発動中だが、魔法を使うには杖が無いと無理だという。そうなると、貧乏な農民では一生かかっても手が出ない。


 まさか、これが異世界転生で失敗する人間の末路なのか。スキル選びに失敗した、人間の末路なのか。


 しかも周りの大人は馬鹿ばっかりだし、顔も醜い奴が多い。貧乏しかいないし、都会とは全く離れた田舎の農村だ。どうやって成り上がれというのか。


 これが、理想と現実という奴だったのか。結局、異世界も日本も変わらない。努力してチャンスを掴んだ奴だけが、のし上がれる世界だったのだ。現実は甘くなかった。


 だが、俺はまだ幼稚園児程度の子供だ。こっからいくらでも人生の軌道修正をかけられる。今から努力し続ければどうにかなる。俺はそう思って一念発起。魔法に関して勉強しまくった。


 魔法の杖は、魔石さえあれば素人でも簡易的に作れるらしい。ろくなものではないが、作れないことはないとの情報を得た。詠唱のセリフも、薬屋のばあさんの家に本がいくつかある。それを貸してもらって勉強だ。


 俺は気合いを入れて、杖の作成と魔法を勉強した。


 三年、五年、十年。十五年。


 両親の畑仕事を手伝いながら、無情に時は過ぎていく。


 気づいたら俺は二十歳になっていて、隣の幼馴染と婚約する羽目になっていた。しかも幼馴染はオーガのような体つきだ。顔はゴリラだし、性格もきつい。俺には到底無理だ。


 結婚相手は親が決めるので、俺に決定権は無い。もはや俺の人生は、結婚という墓場に突入しそうだった。


 なので、俺は十五年勉強して得た、魔法技術を両親に披露した。俺が魔法を使えることを知れば、考えを変えるはずだ。俺が魔法士に成れると、後押しをしてくれるに違いない。


 俺は自分で魔法杖を作り、魔法詠唱も「猿でもわかる初級の魔法書」という本で勉強した。


 俺は全ての初級属性魔法を、両親に見せた。家の中で見せたので小規模な威力だったが、俺が魔法を使えることは分かったはずだ。


 さぁ、俺を褒め称えてくれ!


「す、すごいぞレグ! いつの間にこんな魔法を!?」


「本当よレグ! これで村は安泰だわ!!」


「は? 今なんて?」


 ちょっとまて。今、安泰って言ったか?


「お前は村長の娘と結婚しろ! その方がいい! 村長に言えば、結婚を認めてくれるだろう!」


「そうよ! 隣のゴリラと結婚する必要ないわ! 村長の娘さんと結婚しなさい! そうすれば私たちも安心よ!」


 俺は絶望した。


 両親の考えが小さすぎる。俺が王都に行って魔法士になるということは考えないのか? 魔法士になれば、とんでもない給料をもらえるんだぞ。お国のエリートだからな。まさか両親は目先の利益しか考えていないのか? こんな田舎村で頑張っても、たかが知れているんだぞ?


「父さん!! 村長の娘と結婚してどうするんだよ! 村人が魔法を使えるのは、通常はありえないんだよ!! 貴族様や、正当な血筋でないと、普通は魔法を使えない!! 魔法スキルが農民にはないからだ!! 俺が魔法を使えることが、どれだけすごい事か分からないの!?」


 俺は両親を説得したが、こう言った。


「あぁすごいぞ! だから村長の娘と結婚するんじゃないか!! これで俺たちの老後は安心だ!」


「そうよレグ! 村長の娘さんと結婚すれば安定するわ!」


 前から両親は馬鹿だと思っていたが、本当の馬鹿らしい。


 これは本当に参った。俺が王都で働くことは頭にないらしい。確かに安定した人生にはなるかもしれないが、両親には夢が無いのか? 何かやりたいことは無いのか?


 こうなれば、少ない貯金で王都に行くしかない。親の援助は無いし、絶縁するかもしれないが仕方ない。


「分かったよ父さん。俺はこの村を出ていく。これでお別れだ」


「何!? 何をいってるんだレグ!?」


「俺はもっと大きいことをする。こんな小さな村で終わりたくない。日本では何もできずに終わったから、せめて異世界では何かを成し遂げたい! たとえ失敗して途中で死んでも、やってみたい!」


「レグ何を言ってるんだ! 日本と言うのが何だか分からんが、親の言うことを聞きなさい!」


「今までありがとう。俺をここまで育ててくれた恩は忘れません」


 俺はそう言って、追いすがる両親を振り払い村を後にした。


 やはり現実は甘くなかった。


 どこの世界も人間は「安定」を好む。リスキーな夢など追わないのだ。チート能力で無双出来るのは、ラノベの世界だけだったのだ。


 理想を現実にするためには、継続する努力と、チャンスをつかみ取る運が必要なのだ。才能に頼ってはダメだ。自分の努力で生み出した結果を信じるのだ。


 俺はそれを肝に命じ、王都を目指した。


 異世界における理想と現実は、俺が考えた以上に厳しかった。そして馬鹿すぎる神様を殺したかった。なぜ俺にこんなスキルを勧めたのか、理解に苦しむ。もしかして俺が苦しんで生きる姿が見たかったのかもしれないが、それは今となっては分からなかった。 




 

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― 新着の感想 ―
[良い点] 人生そんなに甘くは、ないw 面白かったです! [一言] ぶっちゃけ、連載モノのプロローグに感じました。 こっから苦労しても成り上がれれば立派な"ラノベ"の主人公になれますよw多分。
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