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心の魔法 1

作者: 月華  雫

 冬の女王様が何故去らないのかーー春の女王様が何故訪れないのか。

 王様には解りませんでした。

 季節は移り変わることなく、搭は勿論、野原も雪と氷に覆われています。

 果実も野菜も実りません。

 馬や山羊、いや、地上の生命全てが、食べ物が無くなり命尽きるのを待つばかりでした。

 ーーーそして当然人までもが・・・

 ※※※※※

  ※※※※※

 ※※※※※※※

  ※※※※※

 とうとう、堪り兼ねた王様は、二人の使いの者を塔に行かせることにしました。


 王様は赤い椅子に腰を掛けて、膝まずく二人の使者に伝えました。

「冬の女王にこれは私の願いだと伝えよ!このまま冷たい氷に閉ざされれば、民たちは皆滅びてしまう。早急に春の女王様との入れ替わりをお願いする!と」

 普段溢れている威厳は鳴りを潜め、握りしめた拳は小さく震えていました。それほど王様は追い詰められていたのです。

「はい、王様!」

 応える使者も、同じ気持ちでした。このまま座して死を待つのみなどとは考えられません。

 「だが、決して冬の女王様を傷つけるではない!冬が訪れなくなれば、民は体を休めず働き続けるだろう。そんなことがあってはならない!」

「はい、王様!承知いたしました」

 使者は、深々と王様に頭を下げました。

 人の未来は我々二人によって決まる、そう心に刻み謁見の間を後にしました。


 二人の使者はまず、森の中にある塔を目指して雪路を歩いて行きました。

 いつも見る森の景色は、樹氷ができ、純白の眺めしかありません。いつもなら枝から新緑が芽吹いているころのはずなのに、心を芯から叩きおるような冷たさしか感じられません。滝から流れ出る水も凍り、上へ登っているかのように見えてしまいます。

 二人の使者は、心にある使命を胸にひたすら塔への道を歩き続けます。景色を見ると心がおれそうだったので、ただじっと、前だけを見て進みました。

 それからしばらく歩いた後、塔の門の所へやっと辿り着きました。

 使者の一人が扉を押してはみたものの、びくともしません。

 二人の使者は顔を見合わせます。

「どうする?」 

「とりあえず呼んでみる他あるまい」

 そう言って使者の一人が、強く扉を叩いてみました。


ドンドンドン!


「冬の女王様お願いです!この扉をお開け下さい!」

「・・・・・・」

 返事は返ってきません。

「王様の願いを私どもはお伝えせねばなりません!どうかこの門をお開きになってください!」

 ーーーそれでも返事はありませんでした。

 二人の使者は項垂れてしまいました。

「何故なんだ!このまま冬が続き、春が来なければ、人々や家畜ーーー植物から生きるものすべて全滅してしまう。もはや、木の根までもが凍りついているのではないだろうか?!」

「女王様を手にかけるしか道はないのか・・・?」

 一人の使者が言うと、もう一人が口を挟んだ。

「ばか!王様がお聞きになると大変な事になるぞ!滅多なことを口にするんじゃない!」

 そう言われた使者は興奮気味に声をあげる。

「そんなこと言ってる場合か・・・・・・!こうなったら少し強引な手を使ってでも・・・そうだ!松明で門の氷を溶かしてみよう!」

  そう言って使者は、冬の女王様がいる塔の凍った門に松明を当てた。

 じゅ~、氷が少しずつ溶けていきます。

「今だ!」

 もう一人の使者が門の扉を蹴りました。

 ドスッ!

 人の倒れる大きな音がしました。

「つぅー!!痛っ・・・!!」

 なんと、蹴った左の靴底が門の扉に張りついてしまいました。

 使者は、ずでっ!と身体が斜めに叩きつけられた。

「おいっ!しっかりしろ、早く靴を脱げ!」

 扉を蹴った使者が、急いで靴を脱ぎます。靴がなくなった左足に凍てつく冷気が襲いました。凍ってしまう前にすぐに防寒布を巻き付けます。

 扉の溶けた氷はすぐに元通りに凍り、片方の靴を見事に貼り付けていた。


「くそっ!いったいなんだってんだ!」

 苛立ちを隠しもせずに、荒れ狂います。

「火も凍りつかせるのか!?ーーーこれは、冬の女王様の怒りなのか・・・それともーーー?」

「それとも?何だってんだ!?」

 少し考えた後、口を開きます。

「悲しみか・・・?」

 それをきいたもう一人が唖然としてしまいました。そして気を取り直したのか、大きな声で続けます。

「悲しみ!?それはないだろう!?今年は冬の女王様は一度もこの塔から出ていない!苦しみや悲しみをどうやって受けるというんだ!?」

「別に外に出ていないといって、悲しみがないとは言い切れないだろう。塔の中にも原因はあるのかもしれない」

「どんな!?」

一人の使者の荒れた気持ちは収まりを見せません。諭すようにもう一人が話します。

「落ち着くんだ。俺にだって女王様がどんな原因でこうなっているかなんてわからない。わからないが、だからといって諦めるわけにいかないだろう。俺たちの背中には、人の未来がかかっている」

 そう言われた使者は、拳を戦慄かせていましたが、やがて深呼吸を何回かした後、少し落ち着いたようでした。

「すまん。言っても仕方ないことをぐたぐだと」

「かまわないさ。気持ちは俺にもわかるしな。それよりこれからどうするかだが・・・」

 使者は腕を組んで考え始めました。靴がなくなった左足を布を巻いた状態で右足において、片足立ちの状態なので少し滑稽に見えました。

 そんな中、ふと思い出したかのような顔で荒れていた使者が話し出しました。

「そういえば・・・昔、雪がとめどなく降り続いた年があったなぁ」

「そんな年あったか?いや、まぁいい。それで何故そうなったのかおぼえているか?」

「うーんーーー確か・・・年頃になった冬の女王様に好きな人ができたんだ。ーーーよりによって、それは夏の王子様だった。この城の規則では、同じ季節の王子様としか結婚することは認められないんだ。だから冬の女王様は夏の王子様の事を諦めるしかなかった。その冬の雪は降り続き、春が訪れないのではと皆が不安がっていたのを覚えている」

「それはあり得ないだろう?まずその二人が出会うはずもない。冬の女王様が、何故に夏の王子様とーーー?」

 当然の疑問に、使者は少し得意気に答えます。

「それがだな、雪の降り続いた年の前年、この塔に冬の女王様が入ってらっしゃった時、夏の王子様が馬で狩りをしていて迷い混んだらしいんだ。その時、冬の女王様は塔の門を開け、次に来る春の女王様への歌を唄

っていたらしい。白く透き通る素肌に、真っ白のドレスを着た冬の女王様の姿が余りにも美しくて、夏の王子様はついお声をかけてしまったらしいんだ」

「それで?それで、どうなったんだ?」

「冬の女王様は、太陽の輝きを背負う、夏の王子様を見て、一目で恋に落ちてしまったそうだ」

 聞いた使者は驚きを隠せません。

「そんなことが・・・・・・それからどうしたんだ?」

「それからーーー」

 

 これは雪を降らし続けた年の前年、冬の女王様が塔に入られていた時のお話。


 狩りをしていた夏の王子様は、見えていた獲物を深追いしすぎて仲間からはぐれていました。はぐれたことに気付いて馬を駆っていると、先ほどまで青々としていた景色が銀世界へと変わっていきます。

 王子様は焦りを感じながら、来た道を引き返そうとしました。しかしよく見ると一人の女性がこちらをみているではありませんか。

 王子様は女性に恐怖感を与えないようにゆっくりと近づき、少し離れた所で馬を止めました。

 その女性はとても美しい女性でした。真っ白な肌に銀色の艶やかな髪、そしてまっすぐな瞳。ひとつの可能性に気付いた王子様は、まさかと思いつつも女性に尋ねました。

『貴方は、もしかして、冬の女王様・・・?』

『はい、太陽のような輝きをもたれる貴方様は誰ですか?』

 カランと透き通ったガラスのような声で、女性は冬の女王だと名乗りました。

『私は夏の王子です』

 少し声が震えていました。王子様は今までに見たこともない美しさを誇る冬の女王様に初めて緊張していました。

『夏の?ーーーなつの王子様が何故ここに行らっしゃったのですか?』

『恥ずかしながら・・・私は狩りをしていたのですが、獲物を深追いしてしまい仲間とはぐれてしまいました。気付いたときには、覚えていた景色とは違っておりまして。彷徨うようにこの塔のある森に迷い混んでしまいました』

『そうだったのですか・・・とはいえここは地面は氷、そして雪が降り積もる森です。慣れていない方にはとても危険です。早くお戻りにならないと・・・・・・』

 心配してくれた女王様でしたが、当の夏の王子様は心そこにあらずで、ただじっと女王様を見つめていました。

『あの・・・どうかなさいましたか?』

 少し不思議に思い、女王様は尋ねました。しかし帰ってきた言葉は思いもよらない言葉でした。

『なんて美しい方・・・透き通る程の白い肌、そして、汚れなき瞳・・・』

『えっ!?』

 心の底から驚いた冬の女王様は、恥ずかしくなり顔を伏せてしまいました。

『私は、貴方の側にいられるのなら、太陽の光も、輝く日々の暮らしも捨て、永久に寄り添うと誓おう!』

 王子様が気持ちを女王様にぶつけ始めた頃、森の奥から王子様がよく知っている声が聞こえました。

『夏の王子様~、どちらに行らっしゃるのですか~!?』

 夏の王子様とはぐれた仲間が探しに来たようでした。

『お迎えが来られた様子・・・王子様、お戻りになりませんと・・・』

 哀しそうな表情で、冬の女王様は王子様を諭します。しかし女王様に王子様の想いが届いているのは明白でした。

『なんと!!もう、我らはお会いすることは出来ないのか!』

 夏の王子様は思わず叫んでいました。

 冬の女王様は、伏せていた顔を上げ話し始めた。

『夏の輝きを背に持つお人。私がこんなにも愛おしい気持ちが心に湧いてきたのはあなた様だけです』


 二人は見つめあっていましたが、とうとう仲間の者が塔の所まで来てしまいました。

『王子様!ここへは来てはなりません!この塔に、今居るのは冬の女王様でございます!決して会ってはいけないお方ですぞ!さあ、帰りましょう!』

 仲間の言うことはどこまでも正しく、無碍になどできません。とはいえこのまま二度と会えないと思うと動けない王子様でした。

 なかなか動かない夏の王子様を、なかば強引に連れて帰ろうと馬の手綱を引っ張りました。

 冬の女王様は、それを悲し気な顔をして見ていました。

『夏の王子様ーーーーーー』

 冬の女王様は、夏の王子様が見えなくなるまでずっと背中を見つめていました。

 ずっとずっと、見えなくなってからもその場から動かず、王子様が去っていった森の奥を見続けいました。

 自分にはない太陽の光を浴びた夏の王子様に恋をしてしまった冬の女王様は、苦しくて切ないこの想いをどうしていいのかわからなくなりました。

 

 ガチャリ・・・


 女王様はなにか聞こえたような気がしましたが、それを気にする余裕などありませんでした。

 塔に戻った女王様は、悲しい想いが膨らむばかりでした。来る日も来る日も王子様を想い、会えない辛さに涙します。

 とうとう冬の女王様は声を失い、歌わなければいけない春の女王様を塔へ呼ぶ歌も歌えなくなりました。


「それで、どうなったんだ!」

聞いていた使者が先を急かします。

「ああっ、それで、それで・・・そうだ!その時は、春の女王様が歌をうたったんだ。あの山の向こうから、冬の女王様に宛てた歌だった」

「春の女王様が歌を・・・・・・?」

「そう、春の女王様が、冬の女王様の恋心を噂で知り、叶わぬ恋に苦しむ心を癒すために歌を聞かせたんだ」

「そんな!本当なら冬の女王様が春の女王様を招くために歌わなければならないのにーーーそれじゃあ逆じゃないか!」

「ああ、確かにあり得ないことなんだが、これ以上、冬が続くと民たちが滅び、冬の女王様も心が壊れてしまうと、必死の思いで、春の女王様が搭に向かって歌声を響かせたらしいんだ。そうすると想いが通じたのか、冬の女王様の涙とも思えた吹雪はピタリと止んだらしい」

「うーむ、そんな事があったとは・・・春の女王様はどのような歌を送ったのだろうな?」

「えーと、確かこんな歌だったはずだ・・・」

 

 春の女王様の歌声。

『悲しみを分けあいましょう。一人で泣いてはいけません。冬の女王様が、雪の結晶を降らすのなら、私は咲き誇った桜の花びらを散らせましょう。あなたの心の優しさは、雪の結晶となって舞い散るのよ。さあ、もう泣かないで、笑顔の結晶に変えましょうーーーーーーラララララ』


「う~む・・・・・・もしかして、まだ、夏の王子様のことが忘れられずにでもいるのか?」

「いや、それに関しては、季節の交替をされる時に春の女王様に言ったそうだ」


『自分に無いものを持つお人が、急に目の前に現れたので、驚きを恋と間違えてしまったのだろうーーーだから、もう大丈夫です』


「そう言って搭を出られたそうだ」

「そんなことがあったのか・・・だが、今回は春の女王様もこの搭を訪れようとしない。いったいどうなっているんだ!」

 使者が雪を精一杯踏みつける。

「いや、こんな所で当り散らしても仕方がない。とりあえず一度城へ戻り、王様へ報告しよう!」

「そうだな・・・」

  二人の使者は、諦めてしぶしぶ帰っていきました。


 その様子をひっそりと見つめる女性が一人。凍りついた扉の向こうの冬の女王はというと・・・


「私の心はもう溶けることはないーーー誰にも止めることは出来ない・・・このような苦しみを、同じ苦しみを春の女王様にさせてはいけない」

 

 女王様の所へ行っていた二人の使者は、王様の待つ城へと無事帰り、王様の前で膝まずき項垂れていました。

 叱責されるであろうと思いましたが、報告しないわけにはいきません。

「王様!冬の女王様に話を聞こうとしましたが、扉が凍り、中へ入る事ができませんでした」

「やはりだめか・・・顔を見ることも声を聞くこともできないのなら、冬の女王様が何を考えているのか解るはずもない!一体どうすればよいのだ!」

 使者を叱責するようなレベルの話ではなくなっていました。王様は腕を組み、顔をしかめています。

 そこへ、別の使者が慌ててやって来ました。


「王様!大変です!」

「何事だ!」

「今しがた、村の者が来まして・・・その者が言うには、春の女王様がーーー春の女王様がーーー」

「なんだ!早く伝えろ!」

「あっ、はい!春の女王様が病に伏せていると、それが、心の病だと・・・」

それまで顔をしかめっぱなしだった王様は、そこでふと顔を上げました。

「心の病??女王様はどうしたと言うのだ!?」

「はい。実は村の者が、このままでは人々は生きていられないと思い、春の女王様の所へ行ったそうです。しかし春の女王様は何を聞いても泣きじゃくるばかりで、答える事をしなかったそうです。それでも、町の者たちが強く春の女王様を責めると、こう言ったそうです」


「わたくしは春の女王です。ですが、今のこのような気持ちでは、皆の為に花を咲かすことができません。今、私が花を咲かすと、雪の結晶が花を枯らしてしまうでしょう。そして、息吹の芽も、氷が張り付き、二度と土から出てくることはないでしょう・・・」


「そう言って、部屋へ隠り、雪の女王様との交代をなさらないようでして・・・」

 王様は口を戦慄かせながら、叫びます。

「真相を知るものはいないのか!何があったというのだ!誰かいないのか!」

 王様は焦り始めた。

 このままだと先がどうなるか、人類が、いや世界がどうなるのか目に見えていました。

 そこへまた、一人の使者が駆け込んできました。


「王様!秋の王子様がこられています!!」

「何だと!?」


 冬に、秋の王子がおおやけに人の前に出てはならないことになっていました。各季節の王子、女王は季節を跨ぐことができないからです。

 季節ごとの女王様と同じく、王子様もそれぞれの季節にいて、女王様が搭へ入り、歌で季節を呼び込むと、王子は城へ行き、国を守るという役目につくのでした。


「いったい、何がどうなっているのだ!」

「私には分かりかねます。秋の王子様はどうしても王様にお会いしたいといらしているようで・・・・・・」

「この季節に秋の王子が何故・・・・・・?まあいい、こんな時だ、通せ!」

「はっ!、承知しました。只今お連れして参ります」


 秋の王子様は謁見の間へ通され、王様の前に行き頭を下げました。そして静かに口を開きました。


「この度は私の無理をお聞き入れいただきありがとうございます。私が出てこられる季節ではない事は重々承知しておりますが、どうしても王様に聞いて欲しいお話がございまして。どうか私の非礼をお許し下さい」

 真剣な顔つきで、秋の王子様は王様にまずお詫びしました。

「構わんよ。こちらもそのようなことなど気にもならないほど切羽詰っておってな。秋の王子よ。ひとつ聞くが、それは冬の女王が去らない、そして春の女王が搭に訪れない事に関係しているのか?」

 王様は眉間に皺を寄せて、質問します。秋の王子様は顔を上げて答えました。

「はい、急がないと永遠に冬だけの季節を廻らせる事となります!そんなことになれば、春に芽を出す作物も枯れはててしまい、夏の太陽が実らせる果実も朽ちてしまい、秋に収穫できる物も全てが根から凍りついてしまいます」

「それは皆分かっておる!だが原因がわからんのだ!何故冬の女王は篭り、春の女王は訪れようともしないのか。どうしてよいのか困っておるのだ!」

「王様!実は夏の王子から、季節を入れ替わるときに聞いてしまったのです。春の女王様は、冬の王子様を好きになってしまい、恋心を綴った歌を森や山へ響き渡るように詠ったそうです。その詩は、やがて冬の女王様の耳にも入り、以前、自分も好きになってはいけない恋をし、苦しんでいたことを思い出したそうで、その時に、春の女王様が歌ってくれたことによって、救われたことを思い出し、今度は自分が春の女王様を助けようと決心されたのだと」

「興味深い話だが、その話と季節の入れ替わりにどんな関係があるのだ?」

 王様は結論を急がせます。

「冬の女王様は、春の女王様の歌に励まされ救われた。しかし冬の女王様は、その時声を患っておられ遠く響き渡るような歌声はだせませんでした。そこで、自分が搭を離れなければ、春の女王様は冬の王子様と会えるのではないかと、お考えになったのではないかと」

 秋の王子は推測を織り交ぜながら、王様に伝えました。

「なんと!しかし話の辻褄はあうなーーーーーーだが、前提がおかしい。何故にそんな事態になってしまったのだ!まず春の女王が冬の王子に会うことなどないはずだ!」

「はい。そのとおりです。ですが異常事態になっているのは誰の目にも明白です。ありえないことが起こっていると考えるべきでしょう。民たちはすでに誰かの仕業ではないかと騒ぎ始めています」

「誰かの仕業?!一体、そんなおぞましい・・・季節を狂わせる事ができる者がこの世にいるというのか!」

 季節を狂わせることは誰にもできることではありません。女王様は特殊な力を声に乗せて、担当の季節を呼び寄せます。違う季節の王子や女王が会えるということ自体異常なことで、季節の明確な境界があやふやになっていることに他なりません。


「王様、落ち着いて下さい。事態を把握するには私が知っている話を加味しても情報が足りません。かといって、悠長に調べる時間もありません。わたしは、一刻も早くこの事態を何とかしないとと思い考えました。」

 王様は黙って聞いていました。王子様に目で先を促します。

「王様から伝えるのです。村人、いや民なら誰でもいいと、その正体を見つけた者に褒美を出すとお触れになれば良いのではないかと・・・・・・」

 王様は手を顎に当て一点を見つめていました。やがて意を決したように立ち上がり大きな声で言いました。


「よし!わかった!皆の者集まれ!」

 王様は家来たちを呼んだ。


「いまからすぐに村へ行き、全ての民の者に伝えろ!冬の女王が何故に搭を離れないのか、何故に春の女王が訪れないのか、そして、二人を惑わせている者が誰なのか、そして、正体が解った時、その者と戦い勝利できるのか!もし出来たとしたなら、なんでも褒美をやろうと!さあ、行け、村へ行き伝えるのだ!」

「はい!王様!」

 家来たちは頭を床にひれ伏した後、一斉に王様の前から散っていきました。


 





 


 

 

 


 




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