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銀の風

作者: 朱音ヒロ
掲載日:2016/01/26

初夏の朝を相棒と共に進む。昨日雨が降ったからか、気温は低く、青い空の下、涼しい風を受けつついつもの道を進んで行く。胸ポケットのスマートフォンからはノリの良い曲がランダムに流れてくる。そのリズムに乗せて足を動かすとペダルの軋む音共に金属のぶつかり合う音が聞こえる。以前盛大にこけた時に歪んだのだろう。チェーンとそれが外れないように付いているカバーが当たっているのだ。チェーンが緩んだり、車体が傾いたら当たる程度なので特に気にしていない。アップテンポの曲に不規則な合いの手が入る。いつも通りに、不規則に。

こいつと出会って何年目だろうか、もうそろそろガタが来てもいい頃だ。だが彼はまだまだ行けると言って体を軋ませる。最近はチェーンが外れて情けない音で走ったりしている。正直もう休んで欲しいと思っている。ブレーキはかろうじて大丈夫だが、ライトもベルも壊れ、チェーンの事も心配だ。遅刻しそうな時は二人で息を切らしながらこの道を走った。あの日の帰りは彼に会いたくなく、親を呼んで一人で帰った。次の日、彼に謝ると、彼はため息を一つして、星を見たのは久しぶりだったと言った。その体は冷えてしまっていて、冷たい金属の色が無性に虚しく思えた。そんな話をすると、彼はもう一度星を見たいなと呟いた。今日はよく見えるらしいとおしえると、少し嬉しそうに金属音を奏でた。暫く進み、よく見た丁字路へ差し掛かった。右はいつもの道。左へ行くと昔の彼女と行った丘がある。彼女と行った時の話をすると、彼も覚えていたようで、あいつは尻の形がよかった、きっと安産型だと言って笑った。実際、彼女は別の男と結ばれ、風の噂で子供が出来たと聞いた。二十二歳で子持ちとは立派だなと彼に言うと、大笑いするように何度も金属音を出した。笑点ならば彼に座布団を三枚差し上げただろう。

ふと、あの丘へ行きたくなった。それは彼も同じだったが、彼は僕の用事を気にしていた。僕は胸ポケットからスマートフォンを取り出し、音楽を止めてからバイト先に電話した。夏風邪を引いたと話すと、バイトリーダーはいつもの妙に高いテンションで心配しないでと言ってくれた。電話を切り丁字路を左へ曲がり走り始めた。すると彼は急に、バイトリーダーはいい人だなと言った。どうしてと聞くと、彼女は君が夏風邪じゃないと気が付いていたよ。気付いていながらも休ませてくれたんだと言った。詳しく話を聞きたくなり、近場で空気入れを借りてきて、自分も自販機で炭酸ジュースを買ってきたので、お互い少しずつ飲みながら話すことにした。


「君が働いている間、俺は野ざらしになっているんだが、あれは少し辛いものだ。せめて屋根があればといつも思っていた。だが俺はそれが当然の事だとも思っていたさ。そんなある日、別の場所から彼女がやってきた。まだ初心者の君の面倒をしっかり見ていて、やっとまともな奴が来たと思ったよ。それが上に立つ者として当然だと思っていたからな。前のやつより随分マシになったと安心していたよ。だが今は彼女は素晴らしい人だと思うよ。普通の人はあんなに人の面倒を見たりしないさ。あの人は特別だよ。…実は俺も彼女に優しくしてもらったよ。いつも俺に布団を被せてくれたんだ。自分の相棒のついでだと言ってね。休み時間には俺と彼女と彼女の相棒…名前はレイラと言うらしい。そんな三人で話すのが習慣となっていた。彼女はいつも君の事を話していたよ。毎日一生懸命やってるからたまには休ませてあげたいとか、いい人だからずっといて欲しいとかね。でも、君には夢があるから、それを優先して欲しいといつも言っていたよ。」


彼との話を終え、僕はまだ中身の残った炭酸ジュースのキャップを閉め、彼に渡した。彼はしぶしぶ受け取りつつ、子供だなと笑って体を軋ませた。丘を登ろうとすると、彼はだんだん息を荒くし、悲鳴をあげだした。やはり辛いのであろう。彼を後ろから支えながら登る事にした。やっとの事で丘の上まで行くと、昔彼女と一緒に見た景色とほぼ変わってなかった。ただ一つ違ったのはあの日見た海が、今は立ち並ぶビルのせいで見えなくなっていることだ。五年もすると変わってしまうものだなと彼が呟く。それでも、海の場所は変わらないさと言うと彼は呆れたように鼻で笑った。しばらく景色についてあれこれ語り合った後、僕は彼に海に行ってみないかと提案した。彼は、塩水はダメなんだけどなと言うが、否定はせずむしろ楽しそうにしていた。時間はまもなく昼を迎えようとしていた。コンビニで弁当を、ホームセンターで油差しを購入し、海へと歩みを進めた。朝に比べ気温も上がり、お互い暑さでのびてしまいそうだった。向かったのは海水浴場。浜に降りると砂のせいで急に足が重たくなった。無料で借りれるパラソルを借り、その下で二人で昼食を摂る事にした。彼は小食で先に終わっていた。なんでも、食べ過ぎると空回りして踏ん張りがきかなくなるらしい。食後、さまざまな事を話しながら昼寝を始めた。


…何時間寝ただろうか、周りの人がいなくなるまで寝てしまったようだ。彼は既に起きていたようで、苦笑いされてしまった。それから、日が沈むまで他愛もない話をし続けた。あの坂は好きだったとか、あの日の雨は笑えるほど強かったなど話している間に日が沈み始めた。こんなに綺麗な夕日を見たことがあったか彼に尋ねたが、一度もなかったと答えた。それから僕らは無言で大きな火球が沈んで行くのを眺めてから帰路についた。五月蝿かった蝉の声も今は心地よく感じられた。例の丘を登るときには、辺りはすっかり暗くなっていた。また二人で歩いて登り、少し開けた場所を見つけ、そこで足を止めた。空には彼が見たいと言っていた無数の星があった。彼は珍しく言葉を失っていた。しばらくしてから、彼はようやく口を開いた。…最後にいいものを見せてもらった、と。なぜそんな事を言うのかと問うと、彼は少し淋しそうな顔で話し始めた。


「俺はもう用済みなんだろう?長年一緒だった俺には分かるさ。曲がるときの君の姿それを見たら一発だったよ。最近の君は妙にガソリン臭かったし、なにより身体中傷だらけだ。よっぽど大変だったんだと分かったよ。だからこそ俺は君を試したんだ。俺以外とやっていけるのかの試験だ。…俺の最終試験も見事合格だ。君には俺らのような存在に対する優しさが人一倍ある。…こんな美しい空を見れて嬉しいよ、相棒。」


そう言い終わった彼の体から"ガチャン"と音がしてチェーンが切れた。彼は自分で"自身の存在意義を消した"のだ。その姿を見て、僕は涙を流していた。


しばらくして、僕は喋らなくなった彼に肩を貸して帰路についた。その途中、知り合いの家で彼を寝かせてあげることにした。僕はその知り合いに彼をよろしくと言って家に帰った。彼が帰ってきたのはそれから二週間後の事だった。彼はすっかり元気になっていたが、まだ寝ているようなので、彼の自室で寝かせてあげる事にし、僕は新たな相棒と共に出かけることにした。

初めてなんで右も左も分からないけどやれるだけやってみます。誤字脱字等、有りましたら遠慮なく言って下さい。訂正して頭抱えながら落ち込みます。よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] とりあえず前半は読みにくかった あと、バイトリーダーが「心配しないで」と言ったとあったがバイトリーダーが「自分のことを心配しないで」といってるようにも取れるのでまぎらわしい [一言] …
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