【男の無用な意地は馬鹿や何かと同列】
【男の無用な意地は馬鹿や何かと同列】
「馬鹿だな」
真顔で言ってくれるカオルがタカシの傍に寄り、それから押さえていた首筋に触れた。
「紙で切ったのか」
「みてーだな」
「手当てした方がいい」
「後でいい。この程度、血も出てないしな」
よっこらしょと、タカシがしゃがんで歪んでしまった段ボール箱を拾い上げた。中身の書類も片付けた床に散乱し、台無しにしてくれている。
「麻島タカシ」
「んだよ」
「馬鹿だな」
「何度も言うな。自覚してっから」
「……久々だ。私がそう扱われるのは」
物心ついた頃から何でも出来たカオルは、それを知る周囲の者すべてに頼られた。老若男女、あらゆる他人を惹きつけた。男女の境を越えて、カオルはひとつの超人扱いをされ続けてきた。
「だが、無用な遠慮はするな。私を頼れ。麻島タカシ」
常に全力を尽くす。助け合うのは人として当然であり、一方的なものでもそれは変わらない。性別や年齢の垣根など、その前には無に等しいのだ。
「だから、私は生徒会長を務めているのだ」
男以上に男らしいカオルに、タカシはまたため息を吐いた。どうやら、最初からかなう相手ではなかったようだ。それでも、貫き通したい意地はある。
「ふむ。しかしながら、ウチの書記並みに派手に散らかしたものだな」
タカシはがくんとうなだれた。あの超・トラブルメーカーのしでかしてくれることと同列に並ぶとは、まさに不覚だった。
「どのみち、棚の整理もこれからすんだし、丁度良い」
「残念ながら、下校の時刻だ」
わずかに傾いている時計は確かにそれを指し示している。カオルは散乱した書類を飛び越え、部屋の扉の前に立った。くすりと笑い、タカシの方を振り返り見る。
「明日、私は早朝より生徒会室にいる。その時に来れば、ここを開けてやろう」
「そりゃどーも」
ぶっきらぼうにそう返すと、カオルはタカシの手首を取った。




