【残った手の使い道】
【残った手の使い道】
盛大な音を立て、タカシは段ボール箱と紙の束の角攻撃を食らった。あらかたものが落ちた棚は軽くなり、ようやく元の位置まで押し戻すことが出来た。
「また一からやり直しかよ……」
散乱した書類と形の崩れた段ボール箱を見て、タカシはげんなりした。身体のあちこちも痛いが、あざ程度のもので済んだ。
「麻島タカシ」
そう名を呼ばれ、タカシはカオルの方を見た。
「どういうつもりだった」
「……んだよ。ちゃんと後始末はつけるって」
「どういうつもりだったと聞いているんだ」
カオルの言葉はあくまで丁寧なものだったが、そのかかる威圧感は魔王の力に似ていた。
「何故、私を突き飛ばした」
タカシは空いていた手で、こちらに駆け寄ってきたカオルの身体を突き飛ばした。その所為で上から落ちてくるものを受け止めることは出来なかった。
「そうでもしねーと、俺を助けにくんだろ」
「当たり前だ。私なら、容易く助けられた。タイミング的にも間に合っていたはずだ」
魔王に勇者のなかの勇者と言わしめる存在。カオルの言う通り、あのタイミングなら逆にタカシを棚の下から引きずり出すことも可能だったろう。
「別に」
「その大きな身体なら大丈夫と思ったか? 多少の痛みなら耐えられると思ったか?」
カオルの言葉は容赦なく、タカシに突き刺さる。
「……別に。ただ、こっち来てほしくなかっただけだ」
「何故? 助けられるものが助ける。助けられたから助けに入ろうとした。それだけの話だった」
ずくんと痛む首筋を押さえ、タカシが盛大なため息を吐いた。
「別に。助けられたかもしれないし、助けられないかもしれない。どのみち、危険なことさせたくなかったんだっつーの」
「それは私が女性だからか」
「はっきり言うな。カッコぐらいつけさせろ」




