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【それから1時間か2時間は経過】

 【それから1時間か2時間は経過】

 2人は黙々と作業をこなしていた。カオルはフロッピーディスクの中身を科目ごとにCD-Rに移し、タカシは無造作に積まれた黄ばんだプリントを科目ごとに分別している。

 「どー考えてもいらねぇだろ、これ」

 「それを判断するのは教師の仕事だ」

 「へいへい」

 カオルならばその判断さえも任されそうだが、それでも教職員の仕事と責任として頑なに譲らなかったのだろう。この有り様を見れば、その気持ちはわかる。

 「終わったか?」

 「いや、床のモンを片付けたぐれーだな。棚の方はこれからだ」

 「そうか。こちらはもうすぐ終わる。下校の時間までもう間もない。残りの作業は明日以降にやってもらう」

 話しながらも作業する手は止まることなく、カオルはひたすら画面に向かっている。タカシが窓を見ると、外はもう赤くなっている。

 「何だ」

 「別に生徒会長様を見てんじゃねーよ」

 タカシはふいっと顔をそらし、悪態をついた。カオルはさして気にもしないようでいる。


 【カリスマの裏に】

 「……そういや、他のメンバーどーした。生徒会長様の手伝いには来ねーのか」

 「喜久磨サオリは会計業務。瀬川シイノは余計に散らかしてしまいそうだから外れてもらった」

 「容赦ねーな、生徒会長様は」

 しかし、その判断は正しい。シイノがこの場に来たら、何をしでかしてくれるかわかったものではない。状況悪化はまぬがれないだろう。

 「副会長は? 腹心だろ」

 「彼女は違うよ」

 「あァ?」

 疑問符を浮かべるタカシに、カオルが応えた。

 「彼女は腹心ではない。もっと容赦情けの無い、敵だよ」

 「……どういうことだよ」

 「単純な話、超・生徒会長の座を狙っている。私を蹴落とすのに都合良いから、副会長におさまっているだけ。背後には斗葉連合もいる」

 整理中、ずっと無表情だったカオルがふっと笑ったような気がした。

 「隙を見せれば落とされる」

 「……女同士は怖ぇーな」

 「それでも有能な、素直でいい人だよ」

 タカシは腕を組み、今度は窓ではなくカオルの方を見た。視線に気づき、カオルも振り向いた。

 「どうした?」

 「いや、まさか生徒会長様からそんなことを聞けるとは思ってもみなくてな」

 カオルはひと呼吸だけ間を置いてから、「そうか」とつぶやいた。もしかしたら、タカシよりもカオル本人が一番驚いていたのかもしれない。

 「いや、すまない。失言だったやもしれぬ」

 「別に俺は他言しねーよ。っと」

 棚から箱を下ろし、中身を確認する作業をしながらタカシは言った。ぎっちりと紙が詰まった段ボール箱は重く、八百屋で鍛えているタカシでもキツいものがある。 

 「つーか、なんでこんなに溜め込んだんだ」

 「前々から超・生徒会や委員会の方で片付けはしている。だが、教師たちの使用もあり、その状態維持はなかなか難しい」

 「だらしねーやつが多いってことか」

 「(おおむ)ねその通りだ」

 片付けていて気づいたのだが、なかには明らかに私物やゴミと思われるものが混じっていた。とりあえずまた別に分けておいたが、それにしても酷いものだ。

 「……っと、取れるか」

 「無茶はするなよ」

 タカシが棚の最上段に手をかけ、段ボール箱をずり下ろした。埃が舞い落ち、タカシの目をかする。そんな不意と不注意をついて、それは起きた。

 「麻島タカシっ」

 カオルが立ち上がり、思わず名前を叫んだ。ずり下ろしたダンボールの所為か、バランスを崩した棚がタカシの方へ倒れかかってきたのだ。

 「っ!」

 タカシが手で突っ張り、棚はガタンと止まった。しかし、棚の上に置かれていた段ボール箱は重力に逆らうことなく落下した。

 ―――げ。

 埃が目に入り、片手で棚を突っ張り、逃げようがない。それでも、タカシは残った手でひとつだけ出来ることがあった。

 「ちっ」

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