【怪しいシップか何かについて】
【怪しいシップか何かについて】
「詳しく教えんかぁ!」
「教える義理も義務もねーな」
「くぅ〜! タカシのくせに生意気じゃぞ」
「仲良しだね、ほんと」
カナコが笑うと、タカシと魔王が同時ににらんできた。
「冗談じゃねぇ!」
「冗談ではないわっ。この根性無しの平民と魔王を一緒にするなど!」
「……はいはい」
2人一緒に帰宅してきたかと思ったら、夕飯を食べ終わった今までずっとこの調子だ。お互い、何か気に障るようなことでもあったのだろうか。
「話になんねぇ。先風呂もらうぞ」
「ぬっ、コラ待て、まだ話は終わっとらんぞ!」
「知らねぇ」
タカシが居間から抜け出し、「風呂出るまで見張っててくれ」とミカコに言い残した。この調子だと魔王が風呂場に乱入してきそうな勢いだったからだ。いや、そうでなくとも構うことなどしないだろう。
「わかってるよ。しっかり抑えとくから、ゆっくり入ってきな」
ミカコが魔王の両肩をがっしりとつかんだ。魔王の筋力ならばミカコを振り払うなど造作もないことだが、流石に家主に強攻策は取れないようだ。
「タァカァシィ〜めぇ! 風呂から出たら覚悟せい!」
悔しそうに、ぐわぁごっと魔王が吠えた。
【風呂場で一日を思う】
湯気が天井で水滴となり、ぱしゃんと落ちる。タカシは身体を洗い流し、一息ついた。その際に気をつけたのだが、それでもぴりっと首筋に痛みがはしった。
「ぃてぇ」
はがしたシップの下にあった切り傷が染みたのだ。最初から血は出ていないが、わずかに肌の色が変わっている。
―――ったく、散々な一日だった。
タカシはため息を吐いた。妙に息が合っている魔王とミツルのテンションや嫌がらせには参ったものだ。本人達はそう思っていないのが実にこにくらしかった。
「どうにかなんねぇもんかね、あいつらは……」
言ったところで聞きやしないだろうが、一度キツくシメといた方がいいかもしれない。だが、ミツルには勇者のなかの戦士ことアンナがいる。魔王は埋めようのない身体能力差と魔王の力がある。果たして、それらに対抗出来るものかどうか。
「この世の中どうなっちまったんだ」
最初からこうだったのか、魔王が来てから何かが変わりつつあるのか。少なくとも、タカシの身の回りは大きく変化したように思えた。
―――まだ変化するのか?
タカシは湯船につかって考えてみるが、なかなかそれらしいことが思いつかない。湯をすくって顔を洗うと湯船に波が立ち、また切り傷を刺激する。
「……やれやれ」
無駄と知りつつ染みる傷口を手で覆い、風呂場の天井を見上げた。




