【陸上部といっても色々あるんだよ】
【陸上部といっても色々あるんだよ】
「短距離から長距離走、走り幅跳びに走り高跳び、ハードル走とかね」
「ほうほう」
「どれも私は苦手だなぁ」
目を輝かせてのハヤミの説明に魔王はさもわかったような顔で頷き、カナが困ったような顔で笑う。
「どれも楽しいけど、競技が違えば練習も違ってくるからな〜。別に1つにしぼらなくちゃいけないわけじゃないけど、これはって思うのにうちこめたらいいよね。ね?」
「まぁ、確かに個々に差はあるからのぅ」
「だけど、やっぱり全部楽しく出来たらいいよねっ」
「ええい、どっちなんじゃ!」
あはははは〜と笑うハヤミに魔王が食ってかかるのを、カナが精一杯とめてみせる。しかし、その努力に気づかないのかハヤミはにこにこしている。
「こ、こっちこそ練習の邪魔しちゃったよね?」
「だいじょーぶ。新入部員の為だもん」
「ワシは入らんと言うておろうが」
「そう? 別に照れなくてもいいのに」
「照れてなどおらぬ!」
校庭周りを走り込みをしている陸上部員達を見つけ、更にそのなかから唯一の知り合いであるハヤミを呼び出すまで、何度こういったいざこざが起きかけたかわからない。遠巻きに見ていたが、改めて魔王のパワフルさとそれに付き合えるタカシとミツル達の凄さに気づく。
「じゃあ、何しに来たの?」
「うむ。陸上部ではなく、おぬしに興味があってここに来た」
「そうなんだ。ってことは、入部してくれるの?」
「おぬしは何を聞いとるんじゃあっ!」
「おさえて〜、魔王さ〜ん〜」
カナが後ろから抱きしめての必死の呼びかける。ハヤミは「冗談だって」と笑う。
「仮にも目上の人間じゃぞ」
「見えないよね」
さらりと出た言葉に、魔王が燃え上がった。ハヤミもさすがにまずいと気づいたのか、全力で走ってその場から逃げだす。魔王はそれを、カナを背にぶら下げたまま追いかける。もはや、この2人を止めることはカナには出来なかった。




