【人の噂も七十五日と言うじゃろうが】
【人の噂も七十五日と言うじゃろうが】
「くだらんくだらん」
魔王はあっけらとしている。タカシの頬の筋肉がぴくぴくと痙攣し、騒ぎの原因をにらみつけた。
「噂を捏造して、広めてるやつらに言われたかねーよ」
「度量の小さいやつじゃのぅ」
「いや、彼にしては頑張ってる方だと思いますよ」
「うるせーよ」
「ファイトだぁあっ!」
アンナのはげましがどのように効いたのか、タカシは机に突っ伏した。それを見て何か思うところがあったのか、いきなりミツルはアンナの頭を撫で始める。アンナはまるで猫のように目を細め、ごろごろとミツルに甘えている。
「……おぬしらは変な関係じゃのぅ。一方的に冷たくするかと思ったら、今はこうしてべたべた周囲の気温を上げおってからに」
「はは」
「こんなんだから誰もついてこれねーんだよ」
ぼそっと机に突っ伏したままでタカシがもらす。自分の気持ちに素直で豪快に一直線なアンナに比べ、ミツルの方は気まぐれでわかりにくい。それでもめげることのないアンナは素敵だった。
「褒められた」
「誰も褒めてねぇ」
HAHAHAHAと笑うミツルのお腹を抱きしめていたアンナが、幸せをかみ締めるようにぎゅうっと力をこめた。ぼぎゅんとかわいらしい音を立て、ミツルの背筋が折れてはいけない方向へ折れた。アンナを撫でていた手が力を失くし、そのままずり落ちた。
「あぁ……イッたな、こりゃ」
「ミ、ミツルゥウゥウウウウゥウウウ……ッ!」
「おぬしは加減を知らんのかっ」
魔王があきれて大声を出すが、それでもクラスメイト達はミツルの容態に関心を持たない。それが日常茶飯事となっている何よりの証明でもあった。




