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【不愉快じゃ】

 【不愉快じゃ】

 「タカシにしてやられるとは!」

 「あー、そうなの〜」

 「へぇ〜」

 5時間目が終わっても不機嫌な魔王の周りにクラス中の女子生徒が集まり、談笑している。ミツルによるタカシと魔王の話がまだ熱を持っているのだ。

 「ねぇねぇ、昼休みは2人でどこ行ってたの?」

 「む? カオルに会いに行った」

 「カオルって……豊泉院生徒会長のこと?」

 魔王が「そうじゃが」と答えると、女子生徒がきゃぁあっと一気に沸いた。耳の奥まで響くその声量に魔王は眉をしかめた。

 「それってそれってどういうこと? 会長相手に釘を刺しに行ったの?」

 「いや、逆に釘を刺された」

 憮然として「やるなら実力で、とな」と返す魔王に女子生徒が一気に離れ、ひそひそと密談をする。その様子を離れたところからミツルが苦笑して観ているのを見つけ、魔王が席を立ってそちらへ向かう。

 「やぁ、人気者だね」

 「これはどういうことじゃ?」

 「さて、どういうことなんだろうねぇ」

 魔王はミツルに昼休みの終わり、カオルに別次元の存在であること、魔王は魔王として勇者に挑むこと、この学校を牛耳るという宣言をしてきたこと、既に魔王の力の存在がばれていたことを告げた。

 「……ああ、そうなの。でも、周りは違う取り方をしたんじゃない?」

 タカシと魔王は同棲関係にあり、魔王は人気の高い豊泉院会長にタカシを奪るなよと言いに行った。そしたら、逆に「渡さないよ」とでも釘を刺された。更に「奪い返したければ実力で」とでも返されたのではないか……と女子生徒は勘違いしたのではとミツルは推測した。恐らく、この推測は間違ってはいない。

 「とりあえずさ、タカシに夜道は気をつけろって言っておこうかな」

 ミツルはHAHAHAHAと外国人風に笑ってみせる。周りの勘違いながらも1人の男子生徒を複数の女子生徒が取り合う様は「これ、なんてギャルゲー?」だ。

 「何がなんだか。まったく、平民というやつはよくわからん」

 「ま、ま、そういう習性なんだよ」とミツルが軽口を言いながら次の教科の準備をする。アンナが来ないのは昼休みにたっぷり構ったから、その余韻に浸っているのだろう。

 「タカシのやつ、戻ってこないのぅ」

 「ほらほら、そういう心配を口に出すと」

 女子生徒が耳ざとく聞きつけ、ミツルと魔王の周りにクラスメイトが一気に集まった。何か見当違いな方向にいっているのに気づいたのか、この際じゃ、と魔王が高らかに言った。

 「言うておくが、タカシとワシは」

 「おーい、席につけー」

 扉を開けて教師が入ると同時にチャイムが鳴った。クラスの皆が口惜しそうに各々の席へと戻っていく。タイミングをはずした魔王もぶつぶつ言いながら、同じように席に戻る。

 「欠席はまた麻島かー? ったく、注意勧告も聞きやしねぇな」

 教師はぶつぶつと文句を言う。誰かが保健室行きましたーと笑いながら言うが、保健室で休んでいいのは1時間だけだ。周りもそのことはよく知っている。

 「……たぁーく、しょうがねーな。はい、教科書とノート開いてー」

 一番前の生徒に「どこまでいったんだっけ?」とわざと聞き、それから教師は授業を始めた。ミツルは寝ないでノートにラクガキをし始め、魔王は退屈そうにそっぽを向くのだった。

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