【強者は誰か】
【強者は誰か】
「しかも相手があれで、何なのかわかってんのかよ。無謀だ、ムボー」
タカシは早足で階段を駆け下り、来た道とは違うルートで教室へ戻る。魔王はその後を追い、学年の違うハヤミとは途中で別れた。
「無謀とは何じゃ。出会った以上、避けては通れぬ道ぞ」
教室まであと少しというところでチャイムが鳴り始めた。魔王はもう道筋に見当がついたようで、タカシをさっさと追い抜いていく。
「あっ、テメェ!」
「もう用済みじゃ」
タカシと魔王の所属する教室が見える頃、ちょうど反対側から担当教師がのんびりと歩いてきていた。つまり、チャイムは鳴ったが、まだ出席は取っていないのだ。
「おぉ、なんと都合のいい! タカシ」
「あ」
魔王の後ろ回し蹴りがタカシの腹に吸い込まれるように、走りながらというのに見事に決まった。避けようのない速度に受身も出来ず、タカシの足が止まる。
「ふっ、そのまま遅刻となれ」
「お前というやつは……」
魔王が教師より速く教室に入り、すぐに自分の席に着いた。その後に教師が遅れて入ってくる。妙に細長い教師は出席簿と席順を照らし合わせてから、魔王のことを確認した。
「えぇと、魔王さん。出席取る前でも遅刻には変わりませんから」
「なんじゃとぉ!」
「しかも、麻島くんを足蹴にしてまでいいわけないでしょう。減点ものですよ」
「ぐ……」
魔王がうなると、タカシが腹を押さえつつ教室のなかに入ってくる。それから開口一番に言った。
「腹が痛いんで保健室行ってきます」
タカシからすればサボリの言い訳だが、事の顛末を見ていた教師は仕方なしに許可を与えた。あとで書類提出すれば、授業には出れなかったものの他生徒を足蹴にしてまでの遅刻よりかはマシな評価が出るだろう。
「じゃあな、魔王。おー、いてぇ」
勝ち誇ったという悪そうな笑みを漏らし、タカシはさっさと教室を後にした。してやられてしまった魔王にとっては屈辱だった。
「……よくわかんないけど、タカシの勝ちだね」
それだけ言うとミツルがシャープペンシルを握ったまま、ノートを取る形を取って寝に入った。昼休み後の授業というBGMはミツルに快い眠りを与えるのだった。




