【物事の謂れには理由あり】
【物事の謂れには理由あり】
「廊下を走るな、というのはこういう事故を未然に防ぎたいが為のものなのだ」
ぶつかる直前、何かがハヤミと柱の壁をさえぎった。それがクッションになったおかげで、衝突は避けられたようだ。
「この階におることは鼻でわかっておった」
「私に何か用があるようだね」
ハヤミを救ったのは彼女の手だった。追いついたタカシが見たのは、敵対関係にあるべきが2人の対峙。魔王とカオルの姿だった。
【この2人を見てると頭痛くなるのはおれだけか?】
「正確に言えば4人ですけれど」
「いたのか」
タカシの呟きにセイが反応する。副会長として、会長の傍にいるのは当然という顔をしていた。しかし、きちんとシイノも数に入れている。
「大体、あの魔王という生徒は何者なんですか?」
「それはこっちが聞きてぇな」
「そうですか。同棲しているというのに?」
流石と賞賛すべきだろうか、この情報収集能力の高さを―――。だが、言葉上はそれに近しいものがあるが内容は全然別物といってもいいだろう。
「変な方に話を進めるな」
「たとえ恋愛感情がなかったとしても、世間的な事実でしょう」
鋭い指摘だ。タカシも今まで自分にごまかし続けていたが、それは変わらない。
「……まぁ、わたくしにはあなたの世間体などどうでもいいことですが」
「そりゃどうも」
「ただし、それが学校の品位を貶めることとなれば、ただちに両者共退学してもらいます」
そんな権限が超・生徒会あるのかは知らないが、正しい処置だ。間違っていないからこそ、魔王の諸事情も言いがたかった。無敵の生徒会長と副会長相手に同情を引けるかも未知数な上、信じてもらえるかも怪しい。
―――ここは黙っとくか。
いずれバレそうな気はひしひしと感じるが、この場を早く切り抜けるにはこれが一番だろう。しかし、その間はずっと同棲関係と思われるのも学生としてどうかと思ってはいる。
「……苦労してるんですねぇ」
タカシが後ろを振り向くと、しくしくと泣くシイノがいた。どうやら、タカシから似た雰囲気というか不憫な境遇を感じ取ったらしい。あまり一緒にはされたくないので、とりあえず無視した。
「つーか、本当に生徒会長探し出してどうする気だよ」
昼休み終了までもう時間が無い。タカシはともかく、カオルが授業に遅刻すれば他の生徒への示しがつかなくなる。しかし、そのことは少しも危惧をせず、カオルは足元のハヤミを抱え起こしていた。そこへ魔王が高らかに言った。




