【切実な乙女の叫び】
【切実な乙女の叫び】
アンナが半泣きで、必死にがっしと魔王にしがみついた。これまでよく横槍を入れず、ミツルに抱きつかなかったものだとタカシは心のなかで感心する。いくらあほの子でも、たまには空気が読めるのだ。
「ぬぉっ、えぇい、離さんかぁっ」
「魔王ぉおっ! 答えてくれぇえっ!」
「こ、この馬鹿力っぷり! おぬしからは特別に色濃く勇者のなかの戦士のにおいがするわっ」
抱きついて離れないアンナに、魔王は思い切り力をこめて引きはがそうとするがびくともしない。それだけ必死なのだろう。
「聞いたか。お前の彼女、生徒会長様と同じ勇者だとよ」
「ああ。……人類の突然変異という点ではそうかもしれん」
タカシとミツルが何か達観したまなざしで2人を見守る。魔王と勇者の戦いに平民は首を突っ込まないのが身のためだ。
「どんなにおいなんだぁあっ! ミツルの為に毎日、ちゃんと身体は洗ってるんだぁああぁぁあぁあぁああっ! どうすれば落ちるぅうううぅううぅうっ!」
「落ちるものかっ。平民にはかぎ分けられぬし、体臭ではなく魂のものじゃ。ある種の雰囲気と思っておればよいっ」
「本当かぁああぁぁああぁあっ!」
「しつこいんじゃあぁ……」
魔王の語尾が少し弱くなっている。勇者に泣き抱きつかれ、魔王はほとほと困り果てているようだ。やれやれと、優しく微笑むミツルがアンナをつかみ、自分の胸元へ引き寄せた。




