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【弁当の時間】

 【弁当の時間】

 4時間目終了のチャイムが鳴り響けば、待ちに待った昼休みだ。我先にと購買に走ったり、仲の良い者同士が集まって昼食会を開くなど思いお思いに過ごす。タカシや魔王達も例外ではない。

 「つーか、なんでおれの周りに集まるんだよ」

 タカシの言葉通り、ミツルやアンナがわざわざ近くの机を引き寄せて座っている。魔王は元々タカシの後ろの席なので、どうとも言えない。

 「いーじゃん。友達だろ」

 「悪友の間違いだ」

 「友が付けば問題ない。それとも、魔王ちゃんと2人きりで食べたかったか? それとも朝来野さんでも誘ってたか?」

 「……」

 魔王のおかげで1人で食べるという選択肢がなくなった。どうせ逃げようにも面白がって追ってくるだろうと、タカシは諦めた。無駄な労力を使ってまで避ける気もない。向こうもそれを承知でいるのだろう。

 「む、魔王ぉおっ! その弁当は何だぁあっ!」

 アンナが今日、魔王が持ってきた弁当に気づいたようだ。魔王は誇らしげにふふんと鼻を鳴らす。

 「これか。これはタカシから貰ったのじゃ」

 「へー」

 ミツルがにやにやと笑うが、タカシは平然としている。

 「大したもんは詰めてねーらしいぞ」

 「ほぅ、らしいと言うことはミカコの手製か」

 魔王がかぱっとふたを開けると、ぱこっと再び閉じた。もう一度ふたを開けるが、まもなくふたを閉じてしまった。

 「どうしたんだぁあっ!」

 「いや、なんじゃ……少しばかりあれでのぅ」

 「早く食えよ」

 タカシが平然と魔王に言いつけると、魔王がぎっとにらみつける。ミツルが魔王の横から、弁当を開けてのぞきこんだ。

 「……健康に良さそうな弁当だな」

 「野菜たっぷりだなぁあっ!」

 「うぅ。ピーマンがぁ」

 これが魔王の嫌がっていた理由か。その弁当は白米を敷き詰めた、その上に肉入りの野菜炒めと漬物がのっている。白米に肉汁が染み込んでいて、かなり美味しそうだった。

 「せっかくの献上品だ。残すなよ」

 「……ぐっ」

 家主であるミカコの手製となれば、居候の魔王は白米一粒たりとも残すわけにはいかない。しかし、魔王の思うようにハシが動かない。

 「肉ばっかり先食って、後は平気なのか」

 魔王がハッと気づいた時にはもう遅い。思うように動かないハシは野菜炒めの野菜ばかりのけている。

 「見ものだな」

 「……」

 魔王が硬直し、自分の弁当とにらめっこを始める。タカシは既に食べ終え、魔王の苦難をペットボトルに入れた自家製麦茶を飲みながら見守る態勢に入った。ミツルとアンナは魔王の様子に苦笑しつつ、その四肢はいつもの弁当攻防戦を繰り広げるという器用なことをしていた。

 「そういや魔王。苦手と言えば、お前さアンナ避けてるだろ」

 何を急に、そんなわけが……と言わんと魔王がタカシのことを見た。

 「それは本当かぁあっ! 気づかなかったぞぉおっ!」

 「割と露骨だったけどな」

 「まぁ、アンナはあれだから気にしてなかったみたいだけど」

 そんなあほの子のように言われるアンナが何か叫んでいるが、魔王は何やらそれどころではないといった様子だ。弁当を持ったままそわそわと落ち着きが無く、浮き足立っている。こんな動揺をする魔王は珍しい。

 「どうした?」

 「いや、な……気のせいじゃ……」

 「魔王ぉおっ! 私のことが嫌いなのかああっ!」

 魔王はアンナにがしっとその手をつかまれ、なおかつストレートに感情と質問をぶつけてこられたので更に慌てふためいた。タカシとミツルはしばらく傍観を決め込もうとした時だった。

 「にぎやかですね」

 騒動のなか、がらりと教室の扉をスライドさせ、堂々とクラスのなかに生徒が3人入ってきた。

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