【朝の集い】
【朝の集い】
「そーか。仲直りしたのか」
「うむ。少なくとも卒業するまではあそこに居候出来る」
「魔王ぉおっ! 良かったなぁあっ!」
アンナが本当に自分のことのように諸手を上げて喜んでいるが、魔王は一歩引いている。朝からそのハイテンションに引いているのか、とミツルは苦笑していた。
「おい、魔王、あんまり言いふらすなよ」
「む。世間体か。気にしたところで、いずれ知られることじゃろうに」
「……まーな。だけどよ、色々面倒なんだよ」
威風堂々、悠然と構える魔王にタカシがぶすっとしている。
「逆に隠しとくから怪しいんだ。いっそ、周知の事実になれば平気だろ」
「なんて説明すんだ。異次元からやってきた魔王です、とでも?」
「ワシは別に構わんが、世には認められんじゃろうな。それは本意ではない」
ミツルの提案にも一理あるが、魔王はあまり乗り気ではないようだ。
「じゃあ、話をでっちあげるのか」
「こんなのはどうじゃ? タカシの遠すぎる親戚で、唯一の身寄りが亡くなり途方に暮れかけていたのをミカコが笑って迎え入れてくれたという、一時期外国に住んでいた経験もある魔王」
「却下」
「タカシの母方の叔母の娘の父方の祖父の孫娘の一人娘で身寄りが亡くなってしまった魔王」
「却下」
「タカシの祖母ちゃんの家の隣に住んでいた息子の嫁の祖母の叔母の娘の一人息子の従兄弟ででぇええぇぇぇえ……身寄りが亡くなった魔王ぉおっ!」
「却下。つか、お前ら最後の魔王で却下されてんのわかってんだろっ」
ミツルはともかくアンナはもう自分で何を言っているかもわからず、適当に叫んで誤魔化している。クラスメイトがちらちらと魔王の話ということで気にしているが、遠巻きに輪に入れない。無理もないことだ。
「おはよう。朝から元気だね」
カナが恐れずにタカシ達に声をかけてくると、タカシを除いた全員がにこやかに手を振り返して挨拶する。ミツルがこっそりタカシのすねを蹴り上げ、耳打ちした。
「お前な、こういう好意の積み重ねが肝心なんだぞ」
「余計なお世話だ」
タカシが照れ隠しにか、ミツルの足をおかえしに蹴る。アンナがそれを察知して「タカシィイッ、何をしたぁぁあああぁあっ! 無事かぁああっ、ミツルゥウウウゥゥウッ!」と騒ぐと、その渾身の叫びに魔王が嫌そうに耳を塞いだ。
「……なんだかお邪魔しちゃったかな。ごめんね」
「いや、別に。それよか、まだ……少し気をつけてろよ」
「あぁ、うん。そうする。心配かけさせちゃってごめんね」
「あやまんな」
カナが申し訳なさそうに言うので、タカシの叱咤する言葉も強くなる。そうすると余計に申し訳なさそうにカナが頭を下げ、扱いに困っているタカシを魔王とミツルがにやにやと見ている。
「っ、おら、もう座ってろ。おれ達と関わりあいになるとろくなことが起こらねぇ」
しっしっとタカシが手で追い払うようにすると、カナはまた一礼をして自分の席に向かった。そのバツの悪さにタカシは苦虫を噛み潰したような顔になった。それをミツルが肩をすくめ、からかう。
「やれやれ。まだまだだねぇ」
「うるせーよ」
ちょうど朝のホームルームのチャイムが鳴り、クラスメイトが少し慌ただしく席に着き始める。アンナはこの世の終わりかと思うくらい悲痛な叫び声を上げながら、隣のクラスへ帰っていった。




