【ノッていこう】
【ノッていこう】
「……と、何を流しておるっ」
うっかり、そのまま校舎案内に戻ってしまうところだった魔王が突っ込んだ。タカシが訝しげに振り向いた。
「んだよ。まだ何かあんのか」
「何故じゃ。何故にここまで引っ張っておきながら、何も無しなのじゃ!」
カナが首をかしげ、タカシは眉をひそめている。おそらく、9月2日もこうして何も進展しなかったのだろう。
「ええい、まだるっこしい奴めっ。生殖機能を充分有している齢のくせにっ」
ダンダンと地団駄を踏む魔王の隠さぬ物言いに、カナは目を白黒させている。ミツルは流石、魔王と言わんばかりのあきれた顔を見せる。
「タカシ、おぬしの意気地が無いことはよーく理解した。しかしじゃ、それではワシが困るのじゃっ」
見事な自己中心っぷりの魔王を、タカシは冷めた目で見下ろしている。魔王はカナを指差し、「……お前、何考え」というタカシの言葉を遮った。
「カナ、時に聞くがおぬしはタカシのことをどう見るか! 見知っている学友か、それとも男として独占したいかっ。さぁ答え―――」
「麻島くん? クラスメイトだけど」
魔王の極端かつ究極の質問をカナはあっさりと返した。悩む時間もまるで無い。これには流石の魔王も固まっている。
「えっと、話って……それ?」
「あ、いや」
本当はいじられていることの自覚やタカシに関する意識調査だったのだが、どちらも終わってしまった。魔王は次の言葉が出ないでいると、代わりにカナが言った。
「麻島くんはね」
【カナの心】
「学校の授業はサボるけど家の手伝いはよくしてて感心するし、とろい私のことを気にかけてくれるくらい面倒見がいいし、暴力はいけないけど運動も出来るし、成績は悪いけど頭はいいし、ちょっと顔が怖いし厳しいところもあるけど本当は子供にも優しいし」
カナは指折り、タカシの悪いところと良いところを挙げてくれる。まるで家族自慢のように言ってくれた。
「……つまるところ、カナにとってタカシとは何じゃ?」
「いい人、かな」
「1人の異性として、精を受けたいとは?」
「えっ、そんな。考えられない」
魔王の直接的な問いに、カナはそうはっきりと返した。
「……今日はもういいぞ。ワシは疲れた。部活動とやらに行くがいい」
「そっか。うん。じゃあ、また明日案内してあげるね」
カナはぱたぱたと歩く速度で走っていくのを、残された魔王達がその背を見送る。カナは一度くるりと振り返って、魔王に手を振り、また走り出した。
「よーくわかった」
そう魔王はしみじみと、腕を組んでカナを語った。




