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【偶然】

 【偶然】

 「んで、どうやってそんな風に持っていく気なんだ?」

 昼食を食べ終えた魔王とミツル達は応接室を後にし、自分達の教室へ戻り始める。人目を構わずミツルの腕や身体に抱きつくアンナ、それを全力で阻止しようとするミツルに平然と気にしない魔王。廊下を並んで歩くと、なかなか目立つトリオだ。

 「ふむ。コトは早急に進めたい。が、充分に策は練る必要があるな」

 魔王は腕を組み、何を思ったかくるりといちゃつくミツル達に言う。

 「敵を知れば百戦危うからず、と言うじゃろう。まずはカナと親しくしている者からに話を聞いてみようではないか」

 「あぁ、なるほど。悪くないな」

 「じゃろう? おぬしら、誰か心当たりはおらぬか?」

 そう訊かれ、今度はミツルが腕を組んで考え出した。首をひねり、ふと視線を上げると「ああ」と呟いた。

 「朝来野さんと親しい人、心当たりがある」

 「まことか! して、それは誰じゃ」

 「後ろ」

 ミツルに指を指され、180度ぐるんと回転する。しかし、またぐるんと180度回転しなおした。

 「ワシは何も見ていない。何も言ってはおらんぞ」

 「お前ら、何の話をしてんだ」

 魔王の真後ろにいたのはタカシだった。


 【肩透かし】

 ミツルはにこやかに挨拶を交わしている。

 「おのれ、甲藤め(はか)りおったな?」

 「謀るも何も、タカシと会っちゃったのは偶然だけど」

 朝のやり取りもあって、非情に気まずい空気が出来ている。

 「朝来野のことなんじゃが」

 「朝来野がどうかしたのか?」

 ……はずだったが、タカシと魔王は同時に発言した。はたとお互いの顔を見合わせる。

 「いや、体育の時に服を貸してもろうてな。これを機に交友関係を広められぬかと一考しておったのじゃ」

 「そうか」

 「そうじゃ。邪魔したな」

 すっとタカシの横をすり抜け、魔王は立ち去ろうとする。ここで出会ったのはまずかった、失態だと唇を噛んだ。

 「……おれはてっきり、カナのいじめか何かの話かと思ったんだがな」

 タカシの言葉に魔王がはっと振り返り、ミツル達も目を見張っている。

 「何故」

 「何故それをぉぉおおぉおぉぉおっ!」

 アンナがミツルを押しのけ、叫びながらタカシに迫る。その本人は「ああ、やかましい」と露骨に顔に出した。

 「薄々だがな。気づいてた」

 「よく見てるな」

 ミツルがにやりと笑うと、タカシはうっと言葉に詰まった。

 「……ともかく、だ。お前らが何を考えてるのか知らねぇが、下手に手を出すんじゃねーぞ」

 「それは何かまずい理由があるんだな?」

 「ねーよ」

 タカシの否定にミツル達は納得がいかないようだ。深々とため息を吐き、じろりとにらむ。

 「お前らなんかが手ェ出さなくても、勝手に解決すんだよ」

 「……」

 タカシはミツルの肩を軽く押し、道を作って歩いていってしまう。ミツルは「午後の授業には出ろよ」と声をかけると、タカシは片手を振って応えた。

 「そもそも手を出してもらうのはタカシなんじゃが……」

 「どういうことなんだぁぁああぁぁあっ!」

 アンナがそう叫んで、何の脈絡も無くミツルを抱きしめる。とっさに首との間に腕を入れたので、羽交い絞めにされることだけはまぬがれた。

 「気になるのぅ。もはや、まだるっこしいこと無しで本人に訊くか」

 「今から?」

 近くの教室が時計を除き見れば、あと10分ほどで昼休みは終わりだ。充分に話を聞く時間はなさそうだった。

 「仕方ない。放課後にするか」

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