表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/195

【呼びつけるというか拉致】

 【呼びつけるというか拉致】

 「ワシを呼びつけるとは、平民のくせに大胆不敵なやつじゃのぅ」

 「いやいや、こちらこそ穏便に済んでよかった。魔王の力とやらを使われるかもしれない、って怯えてたよ」

 革張りのソファーに身を沈め、ゆったりとくつろぐ魔王がミツルのことを「食えぬ男じゃ」とにらんだ。

 「とりあえず、はじめまして。タカシの友人が『甲藤ミツル』と言います」

 「私がミツルの婚約者の日向(ひむかい)アンナだぁぁあああぁあぁああっ!」

 アンナの叫びに魔王が思わずたじろぐ。ミツルもここが気づかれるから、もっと小さな声で叫べと無茶な注文をする。

 「ここはあんまり使われない応接室でね。職員室からも離れてるし、周りは特別教室だから人も来ない」

 「逢引(あいび)きには持って来いというわけだなぁあぁぁぁっ!」

 「だから、大きな声出すなよ。少し静かにしてくれ」

 魔王がアンナの叫びに眉をひそめ、ミツルと向き合った。

 「それで? ワシを呼びつけた理由とは何じゃ」

 「うん。タカシのことでね」


 【ミツルの弁明】

 「ほぅ。そういえば先ほど、家から出てゆけと言われ……ショックを受けた」

 意外にもしゅんと表情を曇らせ、うなだれる魔王にミツルは驚いた。

 「なんで、また高校に、しかもタカシのいる学校に入学したんだい」

 ミツルは聞いておきながら、この質問のなかに答えがあることは察していた。

 「うむ。ワシは少々ここでやっておかなくてはいけないことがある。その為に、1人でも出来ることじゃが、どうせならタカシをこき使ってやろうと思うてな」

 タカシから聞いた通り、どうも素直とは言いがたい。いっそアンナくらいわかりやすくなってほしいところだと、ミツルは肩をすくめた。

 「多少魔王の力を行使したが、それ以外は正規の手続きを踏んだのじゃ。タカシごときにあのように言われる筋合いはないっ」

 魔王が思い出したかのように激昂(げっこう)するが、ミツルは平然と無視した。

 「それは魔王さんも悪いな」

 「何故じゃ。誰にも迷惑はかけておらんぞ」

 「かけてる」

 「誰じゃ」

 「タカシ」

 「じゃから、タカシの手をわずらわせず一切をワシの手でやったではないか」

 ああ、わかってないとミツルはため息を吐いた。タカシが思うことは正反対なのだ。

 「違うんだよ、魔王さん。タカシは、それがいやだったんだと思う」

 「なに?」

 魔王は理解不能という顔をしている。さすが異次元から来た魔王、いやこういう人はこちらの次元でもいるか。

 「タカシはあの性格だから、魔王さんの身の振り方をずっと悩んでたんだよ。おばさんは気にしないだろうけど、ずっと家に置いておくわけにもいかないし、かといって警察で異次元の話をしたら笑われるだけだ」

 アンナはミツルに言われた通りに口を閉ざして、何故か部屋の隅で小さくうずくまっている。ぷるぷる震えている様子はなんだか愛らしい。

 「ずっと魔王さんのことを気にかけてた。それなのに、魔王さんはタカシに何の相談もなく高校に入学した。……正直、裏切られたような気持ちだったんじゃないかな」

 「……タカシのやつ、本当にバカではないか。なんじゃ、それは」

 魔王はミツルの話を聞いて、ぷぅとむくれている。その表情は制服を着ていても、確かに高校生には見えない。

 「では、ワシにどうしろと言うのじゃ」

 「さぁ。どうしたもんかなぁ」

 ミツルは首をかしげて、困ったというポーズをした。魔王はむぅっとうなっている。

 「でもさ、魔王さんがここに入学したのは少しまずかったろうな」

 「まずいとはなんじゃ」

 「いわゆる世間体ってやつだよ」

 魔王はきょとんとした顔で、ミツルの顔を凝視している。部屋の隅にいるアンナのぷるぷる具合は先ほどの倍になっていた。

 「健全な男子高校生の家に、同じ高校に通う同級生の女の子がいたらさ。まずいでしょ。同棲だとか、噂じゃすまない」

 「ワシとタカシの間に何か起こるわけなかろう。タカシとワシの差は蛙と人間を比べるのと同じじゃぞ」

 「うん。それでも世間は認めない」

 「くだらん俗物根性じゃのぅ。よい。言わせておきたいやつには言わせておけ」

 魔王はすっぱりと言い捨てると、ミツルはまずいと思ったのだが笑ってしまう。

 「……ッ。あーあ、魔王さんは本当にいい性格をしてるよ」

 「それは褒めてないな」

 「褒めてる褒めてる。あー、おかしい」

 ミツルは応接室の机に腰掛けると、魔王と向き合った。

 「家を出ろ、っていうのはそういうことなんだ。勿論(もちろん)、怒ってることもあったろうけど」

 「なるほど。まぁ、タカシの言いたいことは大体理解した。しかし、それを何故おぬしが語る?」

 その指摘は(もっと)もだ。ミツルは手のひらを魔王に向けて、やんわりと返した。

 「今まで話したのは友人としての経験から、タカシはこう言いたいんだっていう推測。でも、9割方合ってると思う」

 無愛想な友人を持つと苦労するよ、とミツルは軽口を言う。合わせて魔王もあきれ顔でため息をついた。

 「やれやれ、他人に自分の弁護をさせるとは……」

 「弁護って言うか、ね。これは俺の判断でそうしたまでで、タカシは関係ないよ。念のため」

 「結果的にそうさせるよう、タカシが誘導したものじゃろう」

 ミツルは降参、とポーズを取る。本人達は否定するだろうが、この似たもの同士にはかなわないと悟った。

 「ところで、これから本当にどうする気だい?」

 ここまで話したところでミツルは魔王に()いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ