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【噂の転入生】

 【噂の転入生】

 タカシは放心していた。その理由は目の前で起きていることが理解に苦しみすぎ、脳の機能が追いつかなくなったからだ。

 「魔王……でいいの? 苗字と名前は?」

 「魔王は魔王じゃ」

 「魔・王てことかね? どのみち、日本人じゃないねぇ」

 「うむ。由緒正しき高貴なる一族じゃ」

 魔王と担任教師は名前と出身で押し問答している。こんな状態や状況で如何にして入学出来たのか、とクラスの皆も不思議そうだ。

 「ああ、じゃあ魔王の席だが」

 「タカシの後ろが空いておる。そこに決めるぞ」

 名指し、しかも呼び捨てとあって教室内が一気にざわめいた。当のタカシはあっけに取られているままだ。

 「まぁ、いいだろう」

 「物分りがいいのぅ」

 魔王はにやりと笑い、すたすたと教室を縦断していく。クラスの皆の好奇の視線を気にすることなく、魔王はタカシの前に立った。

 「随分と驚いたようじゃな」

 「……あとで話がある」

 「ふっ、まぁよい」

 タカシの後ろの席に座ると、いきなり後ろから小突いてきた。

 「まだ教科書とやらが揃っておらん。貸せ。どうせ、まともに見ておらんのじゃろ」

 「ああ、いいとも」

 タカシはカバンごと魔王の机に放ってから立ち上がる。

 「お前、家から出ていけよ」

 「なっ」

 魔王に反論させる間もなく、面白そうにタカシのことを見ていたミツルの(えり)をつかんで持ち上げた。

 「うぉっ」

 「すんません。おれとこいつ、腹が痛いんで欠席します」

 「麻島っ」

 「タカシッ」

 担任教師と魔王の制止の声も聞かず、タカシはミツルを肩に担ぐようにして引きずっていってしまった。廊下で待っていた1時間目担当教師も驚いていたが、誰も追いかけてくることはなかった。

 「このまま逃避行か? 男同士はぞっとするな」

 「いーから来い。どうせ、魔王のことが聞きてぇんだろ」

 「ああ。タカシの口から聞けるんなら、これ以上の説明はないな」

 待ってましたと言わんばかりににやりと笑うミツルを、何となくしゃくに(さわ)ったタカシは一本背負いごとく放り捨てた。

 「ミツルゥゥゥウゥッ! 無事かぁあぁぁあぁぁあっ!」

 「ややこしくなるから出てくんなっ」

 隣の教室の中から飛び出してくるアンナの脅威のミツル事変感知機能に、タカシは全力でツッコんだ。

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