【9月3・4・5日】
【9月3日】
「タカシ、今日はな、図書館とやらに行ってきたぞ」
「図書館。へぇ」
魔王はタカシ達と同様の生活を試み、朝・昼・夕飯をしっかりと食べるようになった。その分、若干だが食べる量が減った。そういうところで調節しないと食べられないようだが、食後や風呂上がりの甘いものだけは欠かさない。
「何しに行ったんだよ」
「うむ。少しばかり調べものをな」
「お店の方は1人でも平気だったしね」と、ミカコがしっかりフォローを入れる。
「日本語か」
「それもあるが、まぁワシの覇道成就の為のな」
「覇道?」
タカシの疑問には答えず、魔王はそれだけしか言わなかった。
―――なんかいやな予感がするな。
さっさと風呂に入りに行く魔王を見送りながら、悪寒を感じたタカシは熱いお茶をいれることにした。
【9月4日】
「タカシ、今日は学校とやらに行かぬのか」
「土日は休みだ」
そういうわけで今日と明日はほぼ1日中店の手伝いをすると言うと、魔王は微妙な顔をした。
「週休2日とは随分気楽な身分じゃのぅ」
「まーな。土曜にも授業がある学校もあるし、部活で学校行くやつもいるし、ほんとに色々だけどな」
タカシが空になった頑丈な木箱を店の裏手に持っていく。お客さんのなかにはこれを欲しがる人もいるが、それは状況次第だ。
「で、タカシは部活には入らんのか」
「……。あぁ、そんなヒマねーな」
「ヒマさえあれば入るのか」
「随分突っ込んでくるな。……それでも、おれみたいなやつはは入らない方がいーんだよ」
少し和らいだとはいえまだ厳しい残暑に、タカシは汗をぬぐった。魔王は何となく腑に落ちない、という顔をしている。
「ほら、お前は呼び込みやってろ」
「わかっておる。タカシのくせに生意気じゃぞ」
「へいへい」
2人とも裏手にいたらミカコや店の手伝いにはならない。さっさと魔王を表へ追い立てると、タカシは持ってきた木箱に座り込んだ。
―――……部活、か。
今となってはどうでもいいことだ、とタカシは投げやりな口調でつぶやいた。
【9月5日】
「タカシには友人がおらんのか?」
「また、いきなり失礼なやつだな」
しかも、おばちゃん達の接客のなかで訊くような話かと突っ込んだ。案の定、魔王の質問の意図を読もうとおばちゃん達の目が輝いている。
「いるけど、何でだ」
「店にそのような者が誰も来ないのでな」
「ああ、そういうことか。1ヶ月以上来ない時もあるし、おれのこと知ってから1週間通い続けてくれたやつもいたがな」
クラスメイトだからといって、野菜を買いに来てくれる者は少ない。大抵はもっと家の近くで買う、と魔王に教えた。タカシの家を知っている者も少なく、学校やそういう友人の家から割と離れたところにある、ということもあった。
「ほほぅ、では明日以降からは誰か来るであろう」
「何だ、そりゃ」
「魔王の勘じゃ」
そう言って笑う魔王の表情の下の、その言葉の意味はタカシにはわからなかった。わかったところで、魔王を止められるとも限らない。
「変なことはすんなよ」
「うむ。正規の手続きは取った」
タカシはこれ以上ツッコむのをやめた。




