【9月2日】
【9月2日】
タカシが学校から帰ってくると、魔王は既に店の前に立って呼び込みをしていた。
「おお、帰ったか」
「……感心だな」
「うむ。労働というのもなかなか良いものじゃ」
魔王はくるっとターンしてエプロンをふわっと浮かせる。かなりださいデザインだとは思うのだが、どうやら気に入ってくれたらしい。
「魔王ちゃんはよく働いてくれるよ。案外、力持ちだもの」
ミカコはそう褒めると、魔王はふふんとふんぞり返る。野菜の詰まった段ボール箱を持ち上げられるということに、タカシは素直に称賛した。周囲のおばちゃん達がそんな魔王とタカシ達のやり取りを見て、うふふふっと笑いあった。
「むぅ、なんじゃ気色悪い」
「変な噂にならんといいがな」
ああいうおばちゃん達の口と手にかかって、どんな脚色をされて話が広まるかわかったものではない。ミカコは「大丈夫。分別はあるから」と言うが、怪しいものだ。
「そういや、お前、今日寝てないのか?」
「うむ。まだ馴染まぬようじゃ」
とりあえず、今日は寝て明日からタカシ達と同じように生活するように試みると言う。また、そもそも1日の長さ自体が違ったようだから、その調整は無茶なものにはなるが魔王だから平気と言うわけのわからない力押しの理屈を述べた。
「身体だけは壊すなよ」
「腹も壊しとらんから、今日こそスイカを食すぞ」
魔王は店頭に並ぶ今年最後のスイカをじっと見ながら言うと、タカシは肩をすくめた。
「タカシ、急ぎの配達行ってきて」
ミカコにそう頼まれると、二つ返事で了承する。魔王に一声かけ、愛チャリを取りに裏手へ行った。




