【当たり前に】
【当たり前に】
「それでは、学校とは勉強しに行くだけなのか」
「色々だろ。部活動に燃えてるヤツとか、校風が気に入ってるヤツとか好きな人を追いかけて入ったっていう変り種もいるかもしれんな」
平民の学校生活についてを、魔王は面白そうに聞いている。何しろ魚を食べる手が止まるほどだから、えらく気に入ったのだとわかる。
「タカシでも行けるくらいじゃ。さぞ万人に門戸が開かれておるのじゃろうな」
「オイ」
高校は義務教育ではないので入試があるし、お金などの問題で行きたくても行けない人がいる。万人に開かれているわけではないことをミカコが教えると、魔王はほんの少しだけ少しだけ眉をひそめた。
「そもそもお前は学校に行ったことは」
「無いのぅ」
タカシの語尾をすっぱりと切り捨て、魔王はあっさり否定する。
「学力や金の問題ではない。ワシと同世代の子など眷族にはおらんかったし、立場の違う平民の子と遊ぶ機会も無かった。気を許したのも祖父だけじゃ」
魔王はそれだけ一気に言うと、一気に残っていた夕飯をかきこんだ。それからお茶をぐいっと一息で飲み干す。
「馳走になった。満足じゃ。先に部屋へ戻らせてもらう」
ばたばたと駆けて行ってしまった。魔王のそのわかりやすすぎるぐらいの反応にミカコは心配そうに言った。
「……悪いこと聞いちゃったんじゃないかね」
「かもしれん。魔王の話が全部本当なら、よく耐えたと思うがな」
「全部本当って……まだ信じきれてないのかい」
ミカコは意外そうに言った。当のタカシは箸を置き、2階を、天井を見上げた。
―――……。
その視線の先に、そこには取り忘れたものがあった。




