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【とりあえず】

 【とりあえず】

 「お疲れ」

 「う、うむ……」

 閉店まで散々()で回され、もみくちゃとおばさんパゥワーに圧倒された魔王が少し呆然としている。逃げようにも持ち場を離れることは即ち業務放棄、それは魔王としていかがなものかという心構えから出来なかったらしい。

 「疲れたろう。さ、夕飯だよ」

 ミカコが茶碗に白米をよそい、魔王の前に置いた。今日のメインは何かの焼き魚のようだ。

 「タカシ、これはどうやって食すのじゃ。何か口の中に刺さりそうでかなわん」

 「魚の骨の取り方も知らんのか。どんな食生活送ってきたんだ、お前は」

 「じゃから、ワシは本来このような食事は取らなくてもよかったと言うたろうに」

 食事の形態が違うというのはまことに不便なことだ、と魔王はしみじみ語った。タカシに骨ははずして食べることを聞き、おそるおそる一口食べてみる。

 「……むぅ、タカシッ! ワシは昨日のハンバーグよりこの魚の方が好きじゃ」

 「そーか。そりゃ良かったな」

 「魔王ちゃんは珍しい子だよ。普通、子供っていうのは肉の方が好きなんだけど」

 「ワシを子供扱いするでない。魔王じゃからな」

 「じゃあ、まずは子供にありがちな好き嫌いを無くそうな。魔王」

 「うぐっ」

 魔王が言葉とものがのどにつかえたらしく、目を白黒させている。ミカコが慌てて水を差し出すと、一気にキューッと飲み干してしまった。タカシは「しゃべりながら食うからだ」とあきれている。

 「むぅ。……ところでタカシはワシが寝ている間、どこへ行っておったんじゃ?」

 「あ? 学校だよ、学校」

 タカシは魚の身をほぐし、それを口に入れる。確かに昨夜のハンバーグに比べると少しだけ甘く感じる。甘い物好きの魔王好みの味と納得する。

 「この国の言語は学びはしたが、平民の生活事情には明るくない。もっと明確な目的も交えて話せ」

 「勉強しに行ってんだよ」

 「タカシ、それ、見栄じゃないかい? 魔王ちゃんはあんたが学校へ行く目的を聞いてるんだよ。バカのあんたが勉強目的で行くわけないだろうに」

 「……それ、親としてどーなんだかな」

 ミカコは笑ってごまかすが、魔王の方はまだ聞き足りないようだ。

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