【つーわけで】
【つーわけで】
「店手伝え」
「む」
タカシはタカシのおさがりの大きめのシャツとGパンに着替えさせた魔王を引き連れ、店の方に顔を出した。常連のおばちゃんの姿は無く、ミカコがちょうど一息を入れていたところだった。
「なんでワシが」
「働かざるもの食うべからず」
日本人が好んで使う言葉に、魔王はぷぅと膨れた。
「ワシは客人じゃぞ」
「いつまで家にいるかわからんやつを客人というか。居候だ、居候」
「せめて食客と言え。その方が格好いい」
「どこでおぼえてくんだ、そんな日本語」
タカシと魔王があーだこーだ言っていると、ミカコはまた笑っている。
「あー魔王ちゃん。いやならいーよ。でも、そんなに難しいことをさせるわけでもないから、ね」
ミカコの言葉にうぐ、と魔王が言葉に詰まった。要するに「魔王ちゃんなら出来ないわけない」と……これは魔王の性格上、断ろうにも断れないうまい言い方だ。
「うむ。それならば仕方あるまい。この魔王が直々に手伝おうてやろう!」
「きゃー助かるわ」
タカシはこの白々しい2人にあきれてものも言えなかった。
【接客】
「まずは何をすればいいのじゃ」
魔王に真島青果店が揃いのエプロンを着せる。思いのほか似合っていて、魔王も満更ではなさそうだ。
「そうねー。接客はしたことは」
「無い。魔王は常に威風堂々、媚を売る気にはなれん」
「それじゃ客商売失格だろ」
タカシがそう言うと魔王が食いついてきたのをなんとか避ける。ミカコは眉をひそめてはいるが、表情としては笑っている。
「かといって、お金を扱わせるわけにもいかないだろ」
「ま、そりゃそうだが……こいつに接客はなぁ」
「むぅ、なんじゃ、2人して!」
魔王は怒ってその頬をぷりぷりしている。この態度じゃ確かに厳しい。
「ええい! タカシとミカコはワシに何をさせたいのじゃっ」
しびれを切らした魔王がかんしゃくを起こし始めた。仕方ない。
「呼び込みやってくれ」
「呼び込みとはあれか。『らっしゃい、らっしゃい、今日はサンマが安いよ〜』というアレか」
魔王の挙げた例にタカシはため息を吐いた。八百屋なのに魚はないだろうと思うが、間違ってはいない。
「そーだ。そうやって人呼んで、お客さんが何か欲しいって言ったら俺か母ちゃんに知らせてくれればいい」
「ふむ。大してやりがいはなさそうじゃのぅ」
どことなく魔王には不満があるらしいが、客側の値引きなどを受けさせるわけにもいかないだろう。
「わかった。やってみようではないか」
魔王はずいっと店の前に仁王立ち、少しふんぞり返る。目の前の道行く人は少なく、声を張り上げたところで呼び止る人はいないかもしれない。
「……」
「……」
「……」
タカシとミカコが固唾を呑んで見守っていると、その魔王がくるりと振り返って言った。
「ところで、何を勧めればいいのじゃ?」




