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【始業式に】

 【始業式に】

 「よく間に合ったな」

 「るせー……」

 ミツルの言葉にタカシは弱々しく返した。朝から疲れることばかりで、良くも悪くもいつもの日常だった。

 「今日は防災の日とかで午後は防災訓練らしい。その後、下校らしいぞ」

 「そうか」

 今は1時間目を潰しての始業式が終わったばかりの休み時間だ。タカシはここぞとばかりに椅子(いす)にもたれかかって寝ているが、ミツルは英単語帳とにらめっこしている。

 「ま、よかったじゃないか。今学期はにらまれてて大変そうだしな」

 「るせーよ」

 タカシはむくりとその身体を起こし、ミツルをにらみつけた。

 「そういや、アンナが来ねーな。休み時間はいっつもお前のそばにいるのによ」

 「流石に今日は勉強しとくように言っておいた」

 アンナは幸か不幸かミツルの隣のクラスだ。おかげで休み時間になると「50分も離れていてさびしかったぞぉぉおぉっ!」などと言って、毎回ミツルのいる教室に突撃してくる。教室移動の時は更に切羽詰(せっぱつま)ったものになり、先生方から何百回も指導を受けているという話だ。それでも(あきら)めず、()りずに来るのはミツル一筋が愛ゆえだ。

 そんなアンナがただミツルに「勉強しろ」と言われただけで来なくなるなんて、何かがおかしい。何かが間違っている。

 「勉強ってお前……」

 「おーい、席つけ」

 がらりと教室の戸を開け、担任教師が顔を出した。クラスの皆ががたがたといっせいに席に着いた。

 「あ?」

 「なんだ。やっぱりおぼえてなかったのか」

 ミツルも自分の席に着き、前を向いた。担任教師が黒板に何か書き始めた。

 「今日は長期休暇明けの実力テストの日だろ」

 タカシが固まり、担任教師がテスト開始と終わりの時間を書き終えた頃にようやくつぶやいた。

 「それを早く言えよ……」

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