【通学路】
【通学路】
麻島青果店からタカシの通う公立高校まで歩いて20分強かかる。自転車通学許可を貰えるのは歩いて30分以上かかる生徒だけだった。勿論、学校側に内緒でそれをしようとする生徒も何人かいたが今は皆無だ。
「あ〜、だりぃ」
自宅を意気揚々と出てきたはいいが、やはり慣れない勉強と徹夜をしたせいか眠くて仕方ない。しかし、このまま学校をサボろうにもサボれない理由がある。
タカシはビニル袋の中のトマトをひとつ手に取り、そのままかじった。じゅわっとしみでる果汁で少しだけ目が覚めた気がする。
「よぉ、タカシ。昨日はよくも売ってくれたな」
「タカシィイッ! 昨日はありがとうなぁあ、感謝してるぞぉおっ!」
10分ほど歩いたところで、朝っぱらから騒音と愛を撒き散らすバカップルのご登場だ。
「ったく、やかましいぞ。アンナ」
「すまぁああんっ、だがぁあ!しかしぃぃいっ! このミツルを愛する気持ちはご近所迷惑も考えないのだぁあぁぁあぁっ!」
「あーもー勘弁してくれ」
アンナに抱きつかれ、耳元で叫ばれるミツルはぐったりとしている。タカシはなるべく他人のふりをしようと努めるが、もはや無意味だろう。
「タカシィイッ、何を食べているのだぁあっ!」
「お前らも食うか?」
タカシはひょいひょいっとトマトとキュウリとミツルとアンナに投げて渡す。受け取った野菜を2人はしげしげと眺めている。
「もしかしてこれがお前の朝食か?」
「まぁな」
「ヘルシーで素敵じゃないかぁあっ! さすが八百屋の息子ぉおっ!」
「別にそういうわけじゃねーけどな」
タカシは空になったビニル袋をくしゃくしゃにしてポケットに突っ込んだ。と、そのわずかな隙に公道の真ん中でキュウリdeポッキーゲームをやろうとするアンナをすぐさま止めた。ここまでくると流石に振り回されるミツルに同情する。
「先行くぞ」
タカシはこれ以上は付き合っていられないと判断し、2人を置いて行こうとした。その行動の何がアンナの闘争心を煽ったのだろうか。
「負けるかぁあっ! ミツルゥウウゥゥ、走るぞぉぉおおおぉぉおっ!」
「ちょ、ま……」
ミツルの声と姿は、アンナの巻き起こす砂ぼこりと共にその場から流れるように消えていった。公道で何故そんなものが起きるのか、タカシにはさっぱり理解出来なかった。
―――まぁ、今に始まったことじゃないか。
タカシは舞い上がった砂ぼこりを払いのけ、また歩き始めた。朝から異様に疲れる2人に出会ってしまった。しかも、あの2人が同じクラスと隣クラスというは2学期初日から気がめいる。




