【夏野菜の季節が終わり】
【夏野菜の季節が終わり】
見送りもままならぬまま、タカシは再び煙草に火をつけた。それから魔王が座っていた長イスに腰をかけ、視線を店先に注いだ。多忙か別の理由があってかタカシ以外の誰とも会わず、待たずにして帰ってしまった。
「もうすぐ秋か」
季節が移り変わって、これからもっと茄子がうまくなる。サツマイモも仕入れ時だ。そうしたら裏手からドラム缶を出して、許可を取って、焼き芋を路上で売りに出すことにしよう。
「……変わらねぇなぁ」
魔王がこの次元に来てからも、あの時のタカシの生活は変わらなかった。朝起きて、学校に適当に行って、帰ってきて、寝るとまた朝が来る。その繰り返しだった。地球の人口がたった1人増えただけに過ぎなかった。
「タカさん、これいくらー」
常連のおばさんだ。魔王が帰ったせいか、ようやく客足も戻ってきたらしい。
「さて、今日を続けるとすっか」
日常という繰り返しだったのは変わらないけれど、その中身は良くも悪くも変わったように大きく動いた。慣れない内は戸惑いもあった気もするが、1ヶ月もしたら以前と同じように・当たり前のものとしか思えなくなった。10年以上経った今では、記憶と経験のひとつとして処理されている。
「へい、らっしゃい」
大人になって、世間を見て、知ったことがある。人間は慣れていく生き物で、変わっていくことが変わらないことになっていく。そして結局、変わらないことが当たり前に思えることが一番であることだ。
「毎度どーもっ」
何も変わらない日常を生きられる幸せと喜びをタカシは店頭に並んだ旬の野菜を見て、しみじみと思うのだった。
これでひとつの話は終わりです。
今まで読んでくださって、本当にありがとうございます。
この後、少しだけ番外編を書いていきます。
読みたい登場人物のリクエストなどがありましたら、感想・批評と共にメッセージお願いします。
『タカシと愉快な学友共めひれ伏すがいい。徒然なるままに。』
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