【平等の基本を最初から始めただけ】
【平等の基本を最初から始めただけ】
「頭や幹部をすげかえたところで何も変わらん。未だに国境や領地で仕切りを作るような人が人を裁けるか」
人が人である限り、人に対する心を持つ限り、人は同じ人には平等になれない。感情を持たないロボットのプログラムを組むのも人間であり、自然物でなければどこかに必ず人の手が介入する。
「変えるには、もっと根本から改めねばならないのじゃ」
体裁や体面、面子や矜持を守るために不正を隠蔽し、露見したら謝罪と解雇だけで済ます組織ほど長く保つ。そこに国家が絡んでくれば尚更のことだ。
「根本から組織改革。それが出来るのはワシだけじゃ」
魔王の超寿。それは平民を導いていくためにはそれだけの時間を要し、それを可能にするための進化といえた。
「ワシ1人がすべての抑止力になって、戦争も不正も一応は止まった。あとは人自身が自らの手でそれを当たり前と思う世界へと変えていかなくてはな」
人はやれば出来る。だから、その為に世界は一度、今まで人々が何をなしえてきたのかを振り返り、見直す必要があった。魔王の支配はその猶予だ。
「それが、ワシがここに来た意味になればと思う。ワシがこの次元で生きることを許された礼になればと思う」
「なるもんかね」
その理想は魔王が支配者になった時に世界中に発信された言葉だ。それでもタカシはいぶかしんだ。
「人間に自由を、っていうのもいるぞ」
「仕方ない。所詮、ワシはよそ者じゃ」
魔王はふと寂しげに、少しだけ背中を丸めた。高校時代から変わらず小さい背丈なのにやけに大きな背中を持つもんだと、タカシは微苦笑した。
「ワシがもし万一、いや兆一、道を踏み外した時は勇者が使命と意志を持って殺しに来るじゃろう」
「それもどうだかな」
タカシは煙草を常備している携帯灰皿のなかで潰して消した。魔王の前でポイ捨てしてみせる勇気はないし、常備している時点でその気もないのがわかる。
「大人になっちまったからな」
「それも関係ないぞ」
ふっと、魔王は不敵に微笑んでみせた。
「魔王を殺しても、殺人罪にはならぬからな」
「そうだな」
高校時代ならいざ知らず、人外であることを世界に公表した魔王を守ってくれる法はどこにも存在しない。魔王は一代限りと決め、その自身の為に新たに創る気もなかった。おかげで暗殺未遂は今も絶えない。
「ワシはまだその方が気が楽でいい」




