【お約束】
【お約束】
ちゃぶ台に載っていた料理がきれいになくなり、食後の日本茶を入れる。魔王はこれも苦手だったらしく、顔をしかめていた。
「苦いか」
「うむ。じゃが、ワシは全部飲むぞ。飲んでやるわい」
これはもはや意地だ。魔王の頑張りっぷりを見て、ミカコは冷えたようかんをお茶うけに持ってきた。
「これ、いただきものなんだけど」
「むむっ」
苦いお茶に難儀していた魔王の手が早速ようかんに伸びた。一口食べ、気に入ったらしく2つ目に手が伸びる。それも食べ終えすぐさま手が伸びたかと思うと、ぴしっとタカシの手刀で打ち落とされた。
「少しは落ち着け」
「ぬぅ、やりおる……」
魔王はようかんから目を離さずに、お茶を再び飲むとその相性の良さに目をくりくりとさせた。
「ところで、お前、湯船につかる習慣はあるよな?」
「風呂のことか。こちらでは水浴びしかしておらぬな」
タカシは眉をひそめ、ミカコと目配せした。
「……そうか。なら、先入ってこい」
「ぬ。タカシは一緒に入らぬのか」
「お約束の返答ありがとう。狭いからおれは後でいい」
「つまらん。狭くても良い。お供せい」
「断るつってんだろ。聞き分けねぇな」
タカシが今まで以上に頑ななので、魔王は何か察したようだ。
「はーん、さてはタカシ、おぬし照れておるな」
「誰がっ」
「案ずるな。平民のタカシと魔王のワシとでは蛙と人間ほども種族に格差がある。この2つが恋愛・思慕の関係を持つなどとあり得ぬことよ」
魔王はタカシのことを完全に見下し、高笑いしている。それにはムカついているようだが、タカシは何も返そうとはしない。そこへミカコがフォローを入れた。
「私が一緒に入ってあげるから、今日のところは勘弁してやんな」
「む。わかった。じゃが、次は一緒に入ってもらうぞ」
「入るもんか。ていうか、なんでお前はおれと一緒に入りたがるんだ」
「蛙がまともに風呂に入れるのか見てみたくてな」
「ちょっと待て、コラァ!」
タカシが吼えるが、魔王は平然としている。ミカコはそれを面白そうに見ていたが、頃合を見計らって魔王の手を取り風呂場へ案内する。
「魔王ちゃんの部屋つくっといてあげなさい」
「わーってるよ。魔王、風呂場ではしゃいでどーなったって知らねーからな」
「ふん。ワシはそんな愚かではない」
「どーだか」
タカシは意味ありげににやりと笑うと、魔王はむむっと何やら警戒を見せる。ミカコの手に引きずられるようにして部屋を出て行くと、タカシはようかんをひとつつまんでから片付けに入った。
まとめて台所の流しに入れると、ふと悲鳴に近い声が聞こえた。風呂場の方だ。
「……さて、2階行くか」
タカシは無視して、タカシやミカコの部屋がある2階へ上がることにする。




