【魔王による地球支配】
【魔王による地球支配】
「嘘みてーな話だ」
ふぅっとタカシは肩の力を抜き、魔王に構わず一服した。今は味も香りもそのままで依存性ゼロの無害な煙草が出回っていて、喫煙も禁煙もたやすくなった。しかし、それ以前の喫煙者はどこか味気ないものがあると不評をもらしている。
「事実じゃ」
ただの真実を、魔王は語っている。そこに改竄の、誇張する余地はどこにもなかった。
「そもそも魔王のワシに支配出来ない方がおかしいじゃろ」
「核ミサイルを素手でとめたよな」
「アレが平民の最終兵器じゃったとは思いもよらなかったぞ」
人類の最後の抵抗とされた事件を、魔王はアレ呼ばわりだ。その時点で、既に明確な力の上下関係がわかる。
「魔王にあの程度の武器が効くものか」
あっさりとそう言う魔王に、当時の人間は身震いしたものだ。魔王を接してその破天荒さに耐性がついたと自負していたタカシやミツルでさえ、その映像を見た時には腰を抜かした。
「この世の終わりが来たもんだと思ったが」
頭の悪いタカシでさえ、地球全土の政権が人類から魔王に移った時のニュースで語られた言葉やテロップを一字一句覚えている。それだけ衝撃的なものだったが、今となってはひとつの思い出や歴史の通過点になりさがっている。
【魔王による地球支配10周年の感想は?】
「ま、お前が支配してから……少しは住みやすくなったかもな」
タカシは正直にそう告白した。おそらく、今地球にいる人類から生物の9割9分は強制も圧力も無しに同じ答えを言うだろう。
「ワシは賢魔王の魂を継いだ魔王ぞ。この程度の統治なぞたやすいわ」
そう言えるのも魔王自らの足で出向き、各地で起こっていた内戦や戦争を鎮め、飢餓に苦しむ地域を飽食の国から援助させ、はびこっていた不正を一からすべて正す。誰もが一度は思い描き、夢に見るだけだった平和に近づけた結果だった。
「なに、ただワシの食い扶持を無用なことで減らしたくなかっただけのことよ」




