【運命と錯覚はきっと同じところで感じるのだろう】
【運命と錯覚はきっと同じところで感じるのだろう】
「ワシの父をか」
ややこしいな、とミキヤは真顔でつぶやいた。
「そう。ずっと捜してる」
「音信不通にしてまですることか」
「することなんだ」
魔王の鋭い言葉にキミヤも同じように、強く返した。それから特に同意を求める口調ではなく、諦めたような口調で続ける。
「わからないだろうな。きっと」
他人には理解出来ない。そう言いたいのがすぐにわかる言葉だった。
「……ワシの父もそうじゃったんだろうか」
キミヤが探す雨矢も胎児だった魔王と母、現魔王の地位や故郷である次元を顧みずに捨てた。少しでもためらいがあれば、踏みとどまることも出来たはずだろう。しかし、それは事実ではしなかった。
「かもしれない。そしたら、俺は間違いなくその血をひいているんだろうな」
その魔王のつぶやきにキミヤが応え、川の流れを視線で追いかけ、そのまま吸い込まれるように夜空を見上げた。
「星が見えないな。ここは」
夜明けにはまだ遠い。それでもネオンや排気ガスで、何億光年もかけて届く星の明かりを台無しにしていた。
「7年。世界を見て回るにはあまりに短かった。それでも、世界を知ったかぶるには割と充分な時間だった」
明るい夜空を見上げながら、キミヤは立ち上がった。
「今も世界では戦争や内乱が絶えないし、飢餓で亡くなる子供も大勢いた」
右手で作ったこぶしを左胸に当て、キミヤは目をつぶり感慨にふけった。その感情が自己満足でしかないのも理解している、そう小さくつぶやいた。
「何もしてあげられないわけじゃない。それでも、個人で出来ることは限られている」
個人では救えないものも組織や大勢なら救えることの方が多い。しかし、大がかりな組織や大勢になれば意識がまとまらず・方向を見失うなどして、救いまでの行動が遅くなるか移せなくなるという事態にも陥りやすい。
「ツラい世の中だ」
思うようにいかないのは当然だから、歯がゆかった。それでも無力さをなげいたところで、何も始まらない。
「それと比べると俺が祖父を捜す意味なんてないに等しいね」
キミヤは肩を落とすと、魔王が切り返した。
「では何故」
「わからない」
自信を持って言う言葉ではないが、それには迷いもなかった。
「本当に衝動的だった」
ふと突然、自分がしなければいけないことを見つけてしまったのかもしれない。
「もうよい」
魔王はつまらなさそうに、悲しげにそう言った。キミヤもまたほんの少しだけ眉をひそめ、微笑んだ。




