【こんな時間なので今回は】
【こんな時間なので今回は】
「もしもし」
公衆電話から魔王は電話をかけた。最近では携帯電話の普及でその姿を消しつつあるが、携帯電話を持たない者や緊急時などにはやはり重宝する。
「ワシじゃ」
コール音数回で向こうと繋がり、魔王は振り込め詐欺並みの呼び出しから話す。相手も応答に少しだけ詰まった。
「生徒ならばクラスと名前を言いなさい」
「魔王じゃ」
他にない名前なので電話の相手もすぐに特定出来たようだ。
「こんな時間にどうした。何かわからないところでもあったか」
魔王が電話をかけた相手は数学の武島教師だった。数学の授業においてわからないことがあれば、あらゆる通信手段を通しての24時間質問を受け付けると言う堅物教師だ。
「パソコンを貸してくれ」
「……何を考えている」
この時間に電話がかかってくるのは受験生などで珍しくないそうだが、パソコンを貸してくれというのは初めてだったようだ。武島教師でなくてもいぶかしむだろう。
「時間がない」
「漫画喫茶などにあるものでは駄目なのか」
「金がない」
「……。次の数学の時間、あたることをおぼえているな」
「無論、やってある」
一拍置いてから、魔王は武島教師が上着を羽織る音をその耳に聞いた。
「事情を話せ」
「貸すか貸さぬか」
魔王の言葉は単刀直入で簡潔だ。それ故、時間や嘘がないことをひしひしと相手に伝えさせられる。
「……どこにいる」
「物分りが良くて助かるぞ」
今かけている公衆電話の位置を魔王は武島教師に伝えると、7分で行くと返ってきた。
「わかった」
そこでちょうど10円玉が切れた。確かに魔王には時間がなかった。




