【これが……】
【これが……】
「麻島雨矢。麻島は祖母の姓だ」
擦り切れ、ボロボロになっている写真に写っている男は渋みのあるたくましい壮年だった。魔王はその姿を見るのは初めてだったが、どこか懐かしく感じられた気がした。
「君の話を総合すると、こちらとそっちの時間の流れが違うせいで年代に差がついたのだろう」
「それはわかるがのぅ。信じがたい」
「まぁ、そうだろう。俺もだ」
いぶかしむ魔王にキミヤはあっさりとそう返し、ごろりと土手に寝転んだ。
「そもそも俺と祖父の間に血縁関係があることも疑わしい」
「どういうことじゃ」
「俺の父が、君の父親の子かどうかってことさ」
血が繋がっているかいないかは重要だ。タカシと魔王はもはや親戚という関係からは逃げられないが、血縁関係ではなくなる。
「祖父は俺の父に、祖母と一緒になる前のことは殆ど何も語らなかったと聞いている。俺の父が成人してまもなく祖母が亡くなった時に姿を消したそうだから」
「いけ好かんやつじゃ」
魔王が憤慨するのをキミヤは諭すようになだめた。
「君もまだお腹にいる時にいなくなったそうだね」
「うむ。おかげで顔もおぼえておらぬ」
「母親は?」
「難産だったそうじゃ。その後、魔王を放棄した父に代わって再び魔王となった祖父の元で育った」
魔王はひざを抱え、ふっと星の見えない明るい夜空を見上げてみた。
「ワシには両親というものの記憶がないのじゃ」
「そうか」
ただ、と魔王はキミヤをにらんだ。
「別にそのことを負い目に思ったことはない。実の両親より素晴らしい祖父に育てられたのじゃからな」




