【名に負うもの】
【名に負うもの】
「キミヤ、か。どの字を書くのかのぅ。王と矢か」
きみと読ませることは少ないが、魔王は辞書などから日本語をおぼえた為に記憶していた。大王という言葉を、魔王に似た言葉をよくおぼえていた。
「それで麻・王、魔王か。笑えるな」
ここでキミヤがくすりと笑った。ここまでくれば、ただのこじつけでしかない。
「根拠には乏しいか。では、タカシ。あれは降矢と書いたかのぅ」
タカシの名を出され、キミヤの表情や雰囲気が少しだけ変化した。
「……もし、おぬしがこちらの次元の魔王でないならば、考えうる可能性はもうひとつだけある」
魔王は自らの胸の上に手を置き、指し示した。
「自らの誇りである名を同じ血の通う子に託す」
それは新たに生まれてくるその魂と存在を認める儀と宣誓であり、それ破ることは自らの魂と存在をも破ることに等しい。
「そう、賢魔王が祖父ィエルファニェジクーよりィエルア゛ミャメーァの名を託された父のように」
こぶしを握り固め、そして開いた。
「そして、ワシは父よりクュツトャメーァの名を託った!」
魔王が魔王になった時、今まで繋がっていた血や魂や存在ごとその名を自ら捨てた。
「互いに面識はなくとも覚えがあろう?」
それがもうひとつの可能性としたものの、魔王自身が一番否定したいことだった。
「顔も姿も見えぬ胎児に名だけ与え、ワシを孕んでいた母を見捨て、全てを無視して姿を消したおぬしとてな」




