【そして魔王は自らの部屋の窓から外へと飛び出した】
【そして魔王は自らの部屋の窓から外へと飛び出した】
「どこじゃ。どこに行く気じゃ」
ふわりと地面に降り立ち、魔王は左右を確認した。
「キサマが居場所は、今はここじゃろう」
魔王は何度もそう言ってから、走り出した。
「またか。またなのか」
ぎり、と歯ぎしりをした。少しばかり肌寒く感じた初秋の空気も、魔王の周りでは熱く感じられそうだ。
「許さぬぞ」
十字路に出たところで、魔王は足に力をこめてブレーキし走るのをやめた。
「まだ遠くへは行っておらぬじゃろう」
直感で道を選び、魔王は再び走り出す。途中で自動車を抜き去り、歩道橋をハードルのように飛び越えた。
「見つけてやるぞ」
【午前2時11分】
「……ふぅ」
河川敷の横、土手の上を歩く男がひとつ息を吐いた。それからまた前を見ると、その道をさえぎるように立っている者がいた。
「どこへ行く気じゃ」
男の目を見据えているのは魔王だった。
「よくわかったな」
「ふん。ワシから逃れられると思うたか」
「大したもんだ」
肩を落としならが、男はそうつぶやく。そして魔王から数歩ほど離れたところで男が止まり、正面から見合った。
「逃さぬぞ。キミヤ」
ひとつ、ふたつ、みっつの間を置いて、魔王が静かに低くうなるように言った。
「いや、この次元の魔王よ」
【魔王キミヤ】
「この次元の魔王? 俺が、か」
プッと小さく吹き出し、キミヤは笑った。
「冗談はよしてくれ」
「ワシがそんなものをつくとでも?」
「いや、それはわからないな」
口調ではふざけながらもキミヤは真面目な表情で、魔王に返した。
「いつまでもとぼけられると思うな」
魔王はきっぱりと言い捨てると、キミヤは腕を組んでみせる。




