【飲み干してしまった紅茶をいれなおす】
【飲み干してしまった紅茶をいれなおす】
「……そういえば、魔王さんの親はどんな人?」
お湯入りのカップにティーパックを浸しながら、思い出したようにミツルが尋ねてみた。高校ではアンナがミツルの部屋の話へ転換させてしまったため、訊きそびれていたことだった。
「どうでもよい」
答えにならない答えであっさりと返されたが、それはミツルも同じようにごまかしたので文句は言えない。
「あ、そう」
ミツルが再び紅茶を持ってくると、魔王は既に蜂蜜を片手にスタンバイしていた。ミツルは予め湯の量を減らしておいた紅茶を魔王に渡す時、つぶやかれた。
「少し参考になった」
「何の?」
「答える必要はない」
「はいはい」
魔王が今度は蜂蜜が足りない、甘い茶菓子を出せと要求してきた。苦笑しながら、ミツルはそれを探しに立ち上がることとなった。
「いくらなんでも甘いものの食べすぎじゃない?」
「でなければやっていけんわ」
それから30分ほどミツルと茶菓子をつまみながら談笑して、魔王は帰路についたのだった。
【ミツルの部屋を振り返り見ると】
画一された箱のような部屋のなかに住んでいるミツルや他の住人は、タカシの家に住む魔王にとっては驚きだった。
「わからんのぅ」
住人以外に違いを持たないそれは、まるで檻だ。
「囚人とはよく言ったもんじゃな」
家は住人そのものだ。傷をつけ、直すことを繰り返し、大事と愛着を持って自分をそのものに作り上げていく。
「笑えるわ」
それなのに他と同じであることに安心と喜びをおぼえ、他と違うことを恐れる。だから、住人が画一された家に合わせていっている。好きこのんでそれらに、囚われていく。
「ワシは魔王じゃしのぅ」
周囲、平民と同じであってはいけない。甘んじてはいけない。
「と・いうわけで、この野菜は食わぬ」
「ひとりごともわがままもいい加減にしろ」
キミヤを囲んだ2度目の夕食時にタカシにご飯を取り上げられ、ちゃぶ台をひっくり返さない程度に抵抗する魔王の姿があった。




