【抵抗もしないままに】
【抵抗もしないままに】
「1人暮らしの男の部屋にあがるなんて無防備すぎない?」
ミツルは魔王を下に、組み敷いたまま笑った。
「魔王の力も、ここじゃ使えないでしょ?」
「うむ。そうじゃな」
あくまで冷静に、動揺もすることなく魔王はそう返した。元来の怪力も魔王は振るおうとしなかった。
「このままいってみる?」
「……」
ミツルの目は真剣そのものだったが、魔王は笑った。たったそれだけのことだったが、主導権を握っていたはずのミツルは呑み込まれてしまった。
「冗談冗談」
パッと素早く魔王から離れ、ミツルは降参のポーズを取って謝罪した。その間も、身震いが止まらなかった。下にいた魔王に見下され、負けてしまった。
「タカシにバレたら殺される」
「アンナは?」
魔王がゆっくりと起き上がると、真っ先に出なかったミツルの彼女の名前を告げた。しかし、ミツルは首を傾げている。
「さぁ。泣くかなぁ」
腕を組み、真面目に考えているようだが答えられないようだ。
「……何も言わないかもしれないなぁ」
「ひどい男じゃ」
真っ直ぐにそう言う魔王を見て、ミツルは笑った。
「そうだね。ひどい男だ、俺って」
「アンナをもてあそんで楽しいか?」
鋭く胸に、心に突き刺さるような言葉をミツルに向かって魔王は吐き捨てた。それでもミツルは割と平然とし、肩をすくめてみせている。
「人聞きの悪いこと言うね」
「事実じゃ。おぬしはタチが悪い」
魔王は腕を組みながら、ミツルを指差した。
「自分から突き放して、自分から謝る。まるで他人を試してるように」
人差し指と親指を立てて銃に見立て、魔王はミツルをバーンと撃ってみせる。
「そんなに信じられぬか?」
ミツルは両手をあげて、再び降参のポーズを取った。それからミツルはふいっと顔を横にそらした。
「あー、自覚はしてたかな。でも、普通に接するのも無理くさいや」
諦めたかのように、ミツルは自嘲した。
「だって、それが俺だもん」




