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【忙しい身の上】

 【忙しい身の上】

 「んだよ」

 カオルが人の心を射抜き、見抜くような目でタカシをにらみ、すぐに視線を魔王に移した。魔王はカオルが来た時点で臨戦態勢に入っている。

 「少しまるくなったか」

 「は?」

 「問題なければいい」

 特に用件もなかったらしく、カオルはその場からすぐに立ち去った。場の空気も緩み、タカシは迷惑そうに首を傾げた。

 「わけわからん」

 タカシはひとつ息を吐くと、ミツルと魔王がしみじみと言った。

 「あれが揺れる乙女心か」

 「表情に出ないからわかんないなー」

 「お前ら表出ろ」

 いい加減、相当に頭にきているタカシの肩を華奢な指先で力強くがしっとつかんでとめた。

 「問題は起こすなと言ったのだが」

 「口出してくんなよ、生徒会長様は」

 立ち去ったと思ったカオルはぽんぽんとタカシの頭をなでるようにたたき、ミツルや魔王達を少しだけにらんだ。

 「あまり麻島タカシをいじめるな」

 それだけ言って、カオルは再び教室を出て行った。魔王がひょいっと廊下に出てのぞいてみると、今度は確かに立ち去っていったようだ。

 「愛じゃな」

 「素晴らしいね」

 「ほんとだなぁあっ!」

 3人が口々に言うと、タカシはがたんと席から立ち上がった。それから今まで座っていたイスを手に取り、わずかに浮かせるように持ち上げた。

 「お前ら、やっぱ表出ろやコラァッ!」

 今までたまるにたまっていたものすべてをぶちまけるような怒鳴り声が教室に響いた。流石のミツルも少し青ざめている。

 「きれた! タカシがきれた!」

 「だから何のネタかわからねぇっつうの!」

 手に持っていたイスを床にたたきつけ、魔王とミツルをにらみつけた。

 「おお、不良らしいぞ! タカシ」

 クラスメイト達は久し振りに切れたタカシを恐れて逃げ出し、標的にされたミツルがなだめようとするが面白がる魔王は更に怒りをあおるような真似をし、アンナはミツルを守るためにタカシに戦いを挑むという、もはや収拾がつかない状況にまで陥った。

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