【9月13日】
【9月13日】
「へぇ、タカシの父親が」
「帰って来たのかぁあっ!」
「やかましい」
魔王がミツルとアンナに昨日のことを話してしまった。別に隠すことでもないのだが、口うるさくなる。
「いやいや、ぜひ一度そのご尊顔を拝見したいね」
ミツルはお手手のしわとしわを合わせ、ナームーとしてみせた。
「仏像じゃねぇっつの」
タカシの突っ込みにHAHAHAHAHAとオーバーアクションでミツルが笑った。朝からアンナにも負けないハイテンションだ。
「ま、これで麻島青果店も一安心だな」
急に真面目な顔になったミツルは魔王、タカシの順に目を向けた。
「タカシも少しは楽になれるんじゃない?」
「……どーだか」
今まではミカコが実質1人で麻島青果店を切り盛りしてきたが、不在の父親が帰ってきたのだ。タカシの負担も軽減されるはずだろうが、当の本人は浮かない顔をしていた。
「またどっか行っちまうさ」
その言葉は静かで重かった。
「タカシ……」
ミツルがぽんとタカシの肩に手を置き、ゆっくりと首を横に振った。
「意外とかわいいな」
「うるせーよ」
タカシは肩にのせられた手を邪魔そうに振りはらった。
【親の顔を見てみたいが見てもどうしようもない】
「そういえばおぬしらの親はどんなのじゃ?」
魔王の疑問は若干失礼なものだったが、アンナは気にせず答える。
「わたしの家族は普通だぞぉおっ!」
アンナがそう言うと、ミツルが魔王に耳打ちした。
「ペットの犬も含めて全員アンナそっくり。ご近所の名物家族」
うぇ、と魔王が嫌そうな顔をした。それだけですべて察せられる。
「今度遊びに来ないかぁあ!」
「遠慮させてもらう」
魔王はすっぱりと断った。アンナは「遠慮などするなぁあっ!」と残念そうに叫んだが、そうは聞こえない。
「甲藤は?」
とりあえずアンナを無視して魔王は話をミツルに振った。
「おれ? 両親いないから1人暮らし」
「死んだのか?」
「オイ」
直球な魔王にタカシが突っ込むが、ミツルは気にしてはいないようだった。むしろ笑っているようにさえ見えた。
「死んでない。けど、どうでもいいかな」
至極あっさりと、高いところから突き落とすように言ってのけた。
「感謝はしてるけど、礼を言う気はない」
その言葉には何のためらいも悔いるところもなかった。
「冷めてるのぅ。タカシの家とは大違いじゃ」
「うん。全然違うね」
わずかに微笑みを残したまま、ミツルは腕を組んだ。
「ミツルの部屋に行ったことあるかぁあぁあぁあぁぁあっ!」
唐突に話を振ってきたアンナに魔王が「いや、ないのぅ」と返してやった。
「大声で言うな」
「何にもないんだぁあぁぁあぁああぁっ! あ、あのエ、エェエロ本も無いんだぁあっ!」
「だから大声で言うなっつーの! 少しは恥じらいを持て!」
タカシに怒鳴られ、アンナが「す、すまんっ!」と大声で言った。しかし、既にそれは遅くクラス中に響いてしまったようだった。
「で、本当なのか?」
若干小声になった魔王の問いに、ミツルは腕を組んだまま答えた。




