【居間に残されたミカコとキミヤ】
【居間に残されたミカコとキミヤ】
「随分としっかりとした考え方を持っているな」
キミヤはミカコからガトーショコラののった皿を受け取り、フォークでつついて口に運ぶ。誰のことを指しているのか、ミカコは聞かずとも察した。
「あれでもタカシと同い年だもの。魔王ちゃん」
「そうなのか」
「言ったろ。事情あって預かってんのさ」
ミカコがシュークリームを嬉しそうに、大口を開けてほおばる。猪熊のシュークリームは大きく一口で食べることは難しいのだが、それが出来ないとなかにたっぷり詰まったクリームが手のひらにあふれ出てしまうのだ。
「それで同じ屋根の下か」
あふれ出たクリームを見て、キミヤはミカコにティッシュを何枚か渡そうとする。しかし、勿体ないのでミカコは指からそれをなめとってしまった。
「問題は?」
「ないね」
自信を持って即答するミカコに、キミヤは物憂げに微笑んでみせる。
「なら、いいか」
父親として注意することもなく、あっさりとキミヤは引き下がった。
「家にいなかった俺に言えることはない」
無表情のまま、キミヤはフォークを置いた。ミカコは何も言わずに、キミヤの皿と自らのと重ねた。
「ごちそうさん」
両手を後ろに回し、キミヤはよりかかるようにして、アイスの棒が刺さったままの天井を見上げた。
「寝るとこはあるのかな」
「ちゃんとあるよ」
ミカコがそう返すと、キミヤは「それは良かった」と明るく微笑んだ。




