【家族そろいましたが】
【家族そろいましたが】
まったく会話がなく、ちゃぶ台を囲んでいるというのに黙々とはしだけを進めている。団欒というには程遠く、場の空気は重苦しい。
「……」
この空気を作った一端の魔王が耐え切れずに口を開こうとした時、キミヤがようやくタカシに話しかけた。
「タカシ、学校の方はどうだ?」
「ぼちぼちだ」
愛想のない息子からの返答に、キミヤはめげずに続ける。
「野球は、続けてるか?」
しかし、その話題はまずかった。タカシがキミヤの方をちらりと視線をやり、またすぐに自らの手元に戻した。
「やめた」
「そうか」
特に追求することなく、キミヤはお茶を1口すすった。また気まずく、重苦しい雰囲気になってきた。
「さて、ケーキじゃな」
魔王が立ち上がり、場の空気を読まずに台所の冷蔵庫の前まで歩いていく。ガチャンと扉を開けると、他のものを押しのけてケーキの紙箱が3つも詰め込まれている。よく入ったと思うものだが、昼飯時にキミヤがなかに入っていたおかずを食べ尽してくれたおかげで、そのスペースが出来たのだろう。
「うむ」
少し考え、魔王はゲンタのホールケーキの箱を選び、取り出した。それからフォークとナイフも手に取り、居間の方へ戻っていく。
「マジでホール食う気か」
「やらんぞ」
タカシが「いらん」と一蹴すると、魔王は安心しきった表情で紙箱をちゃぶ台の上に置いた。
「魔王ちゃんやタカシの同級生が作ったんだって?」
「そうじゃ。ケーキ職人を目指しとるらしくての、ワシの確かな味覚を見込まれ試食を任されたのじゃ」
「嘘つけ。駄々こねて貰っただけだろーが」
注目が集まるなかで魔王が紙箱を開けてみると、大きさが7号くらいのケーキがあった。その表面は生クリームと色とりどりの果物でデコレートされている。
「見た目は悪くないのぅ」
魔王はナイフでケーキを3分の1ほど豪快に切り分けてみると、その断面からスポンジで黒いあんこをはさんでいる和洋折衷的な代物だとわかった。
「へぇ」
「では、いただくとしよう」




