【店の閉店時刻頃】
【店の閉店時刻頃】
「今帰ったぞー」
「アンタ、おかえり」
キミヤがきちんと家に帰ってきた。そのことに目を細めるミカコが笑って、出迎えた。
「ケーキ買ってきた」
「猪熊のとこかい。さっきこっちでも買ってきたとこだよ」
「そりゃまずかったかな」
長年離れていたが、夫婦そろって考えることは変わっていないらしい。どうしようか、とキミヤがミカコに聞こうとした時だ。
「よい。気にするな」
キミヤの手にあった紙箱は横から、ミカコと2人の間からひょいと取られた。
「ワシがすべて食う」
魔王だった。キミヤはあっけに取られているようだが、ミカコは苦笑している。
「こらこら、そんなの食べる予定でいると夕飯が入らないだろ?」
「心配されんでも別腹じゃ」
得意げに笑う魔王は、紙箱を抱えてそのまま持って行ってしまった。
「やれやれ」
「あの子は?」
キミヤは去っていく魔王の背中を見つめ、つぶやいた。そのことにミカコはビックリしている。
「て、アンタは気づいてなかったのかい」
「ケーキは3つしか買ってこなかった」
ミカコは「そうかい」と笑って、キミヤに教えた。
「……あの子は魔王ちゃん。ちょっとわけあってウチで面倒見てるんだ」
「魔王?」
首を傾ぐキミヤだが、ミカコは気にせず答えた。
「そういう名前なんだって」
「なるほど」
キミヤは腕を組み、自らのあごの辺りをさする。
「似てるな」
「あぁ。なんかタカシと兄妹みたいだろ」
面白そうにミカコが笑うと、キミヤも「なるほど」と微笑んでみせた。それからミカコがキミヤの背を軽くたたいた。
「さっ、久々に家族全員そろっての夕飯だよ。たっぷり食べとくれ」
「そうだな」
靴を脱いで上がろうとするキミヤに、ミカコは凄みをかけて言った。
「それと話、たっぷりと聞かせてもらうからね」
「わかった」
キミヤはミカコの目の奥をのぞくように見つめ、それから自らの目を閉じた。




