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【思慮に欠けた子供のすること】

 【思慮に欠けた子供(ガキ)のすること】

 「役に立たねーな、お前」

 それは中学1年の2学期の終わりのことだった。性根から暗かった彼は早くもいじめの対象として目をつけられ、身も心もぼろぼろになっていた時だった。

 「何にも出来ねーのか?」

 シンプルで、明確な指摘だった。自覚はしていたはずなのに、彼がいつまでも目を背けていたかったことだった。

 「テメー、だからいじめられんだよ」

 声をかけてきたのは素行が悪いと評判の不良、目つきの怖い男子生徒だった。彼は関わり合いを持ちたくない一心で、不良が何を言ってこようとも黙り続けることにしたようだ。

 「シカトは出来んだな、テメー」

 不良は舌打ちし、彼の胸ぐらをつかみながらそう言った。

 「なんか役に立ってみせろよ」

 それはただ彼をいじめるだけの言葉だったのかもしれない。

 「やってみろ」

 不良に胸ぐらをつかまれ、彼は怯えた。それでも何かを奮い立たせるには充分だった。

 「見返せるもんならな」


 【決していい話ではなく】

 「でも、結局なぁんにも出来なくてね。いじめは続きました」

 彼はあっけらかんと言うが、魔王がのぞきこんだその目の奥には複雑な思いが見えてくる。下になっているタカシは何も言わないのか言えないのか、あれこれと技をかけられ続けている。

 「……その後ぐらいに、麻島くんがケガをしたっていうんです」

 喧嘩か事故か、タカシは誰にも語ろうとはしなかったと彼は言う。

 「もちろん、いじめられてるボクをかばってとかじゃないけど。ひじを少しね」

 「ひじ?」

 「うん。まぁ爆弾とか後遺症とまでは言わないけど、クセみたいなのが残っちゃったんです」

 上に乗ったままの彼がタカシの左腕を取り、背中へ回した。その腕を押さえたまま、ひじに何かマッサージのようなことをしている。

 「ほほぅ、それは初耳じゃ」

 「言えるか」

 タカシはぶっきらぼうに、短くそう答えた。詳しく話す気もないらしく、魔王は組み伏せられているタカシの顔を踏んづけてやった。

 「日常生活には、ま、問題ありませんけどね」

 完全優位に立った魔王とそれを気にすることなく技を遂行し続ける彼にタカシは低い声でうなった。

 「あの時のボクに声をかけてくれた麻島くんに、何かしてあげたかった」

 ほぅと、どこかうっとりとしたため息を彼は吐いた。

 「思いついたのが、これなんです」

 彼は得意げにタカシに、自らの足を絡めて腕を固める腕ひしぎ十字をかけた。

 「これとは」

 「プロレス技による整体」

 魔王はおぉ、と感心した様子を見せた。しかし、抵抗することを許されていないタカシは面白くなさそうだった。

 「色々と間違ってるがな」

 「ぇぃ」

 小声でうなるのが聞こえたのか、彼は少しだけ意地悪をしたようだ。タカシが技をかけられたまま動かなくなった。

 「面白そうじゃな」

 「でも、結構力いるんです。最初は抵抗されましたけど、関節技マスターしたらおとなしくなってくれました」

 「おかげでいらんめにあってる」

 「ぇぃ」

 堪え、復活したタカシの顔が再びゆがむ。それを見ている魔王は本当に楽しそうだった。

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