【……で、何が無理なの?】
【……で、何が無理なの?】
「なにって……」
店先でぽかんとするタカシに対し、ミカコは笑っている。
―――いいのか、それで。
悩んでも仕方ないと言わんばかりに、タカシは唐突に今のところ理解しているすべてのことを打ち明けることを決めた。そして、客足の無い店先で思い切ってミカコに話しきった後の一言がこれだった。
「マジでウチに泊める気か」
「なにさ、あんたが言ったんじゃないか」
「そりゃそうだけどよ……。もっと魔王のことで反対するとかねーのかよ」
タカシはミカコに言ったことを自ら否定しだす。ミカコはそれを聞くと、ふっと微笑んでみせた。
「息子のあんたが決めたことだ。親の私は反対しないよ」
「どういう理屈だよ」
「信用してるってことさ」
ミカコはにかっと白い歯を見せると、タカシはあきれている。これがまともな親かと言わんばかりに、あきれかえった。
「じゃ、もうそろそろ店じまいして、夕飯でも作るかね」
店頭に並ぶ野菜はまだ残っているのに、沈む陽と共に客足は途絶えてしまった。ミカコは背伸びし、閉店の準備に入る。タカシは「あーあ」とひとつ息を吐き、ミカコと一緒に片付けを手伝う。段ボール箱を持ち上げたところで、ミカコが制した。
「あんたはその子んとこ行ってな。こっちに手伝いはいらないってーの」
「はぁ?」
「……まぁ、あんたの言う通り、その子の言う次元だとか何とかわけわかんない。家出の言い訳にでたらめ言ってるのかもしれない。でも、わかるのはその子が不安だってことさ」
それはわかる。タカシの目からでも、その言動から見て取れた。
「なら、誰かついてやった方がいいだろ。片付けは私1人で充分さ。なにせ、あんたの図体がここまで大きくなるまでずっと1人でやってきたんだから」
そう言われてしまうと、タカシは反論することが出来ない。一時期は「こんな店、誰が継ぐもんかっ」とつっぱねて、ミカコと1年近くも口を利かなかったこともあった。こういう風に手伝いを始めたのも、今年に入ってからのことだ。
「てなわけで、とっとと行った行った」
シッシッと手を払い、タカシを追い払う。タカシの方はまた魔王につき合わされるということで、乗り気ではない。逆にミカコはほんの少しだけ額にしわを寄せつつも、嬉しそうだった。
「久し振りだね。3人で夕飯を食べるのは」
タカシは何も返さなかった。




