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【帰ってきてみたら】

 【帰ってきてみたら】

 「タカシ、また来てくれてるよ」

 ケーキショップ猪熊から帰ってきた2人を見て、ミカコがそう言った。

 「また? ……あぁ」

 タカシには何か心当たりがあるようだが、魔王にはさっぱりわからないようだ。ミカコの口ぶりや家の静けさからしても、ミツルやアンナではないようだった。

 「なんじゃ、客か? 手土産は」

 「ねーよ」

 即答するところから、既にあがって待っているのはそういう客らしい。魔王はつまらなさそうな顔をした。

 「お茶だけ出してるから」

 ミカコの言葉に魔王は「ケーキは渡さんぞ」と威嚇(いかく)を見せるが、タカシは元から相手にしないといった感じでスルーした。

 「せんべいあったっけか?」

 「戸棚の奥」

 「ありがちじゃのぅ」

 「うるせーよ」

 どかどかと乱暴に店の奥へタカシは上がりこみ、戸棚からせんべいの入った袋を手に取って、客の待つ部屋へ入っていった。魔王もなんとなく、といった様子でその後に続いた。


 【部屋で待っていたのは暗い青年】

 それも鬱陶(うっとう)しいまでの陰気をまとい、彼がいるだけで部屋の湿度が上がり、きのこが生えてきてしまうのではないかと思うぐらいのものだった。

 「やぁ、帰ってきた」

 「呼んでねーぞ」

 「呼ばれてなくてごめんね。で、でも、そろそろじゃないかって思って」

 彼は恐縮し、へこへこと地に額をこするような土下座を何度もくり返した。その様がこれほど似合う者もいないだろう。魔王は哀れや同情を飛び越えて、感心している。

 「もういいっつーの」

 「(おもて)を上げい」

 タカシは何もしていないのに疲れたような顔で、持っていたせんべいを適当に放り投げる。魔王はノリノリで命令した。彼は逆らわず、素直にその顔を上げた。

 「ところでおぬしは何をしに来たんじゃ?」

 「うん。あのね……」

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